★白土勉『火の獣』角川ホラー文庫

 白土勉『火の獣』角川ホラー文庫を読了。


 北海道大雪山の永久凍土の下から発見された新種のメタン分解菌TypeⅢ。それは地球温暖化をくい止める切り札となるものだった。だが、そのTypeⅢを採取しに来たヘリコプターを巨大な羆が襲い、ただひとり生き残った地球環境学者である祥子はかつての夫の倉沢に助けを求める。あわてて大雪山に駆け付けた倉沢たち。だが、ひとり、またひとりと、凶暴な羆の餌食となっていくのだった。
 巨大な羆が人間を片端から屠っていく描写は実に迫力があり、この手の小説としては申し分のない仕上がりである。動物パニックホラー小説としては、充分な完成度だろう。だが、人間描写がぜんぜんダメダメなのが惜しまれる。そこでそのセリフはあり得ないだろうとか、そこでその行動はまったく説得力がないぞというシーンが続出してしまうのだ。せっかく緊張感が高まっているシーンなのに、人間のセリフひとつで台無しにしてしまったりしているのだ。実にもったいない。