★澤村伊智『怪談小説という名の小説怪談』新潮社

 澤村伊智『怪談小説という名の小説怪談』新潮社を読了。
 「高速怪談」は、長距離ドライブの車に乗り合わせたメンバーが怖い話を披露していく話なのだけれど、最後で怖いオチがつく。収録策の中でもっともシンプルな作品ではあるのだけれど、シンプルなだけにインパクトがあった。
 「笛を吹く家」は、暴れる息子に悩まされる夫婦と、子どもが行方不明になる幽霊屋敷の話。
 「苦々陀の仮面」は、国際的に評価されたホラー映画を撮ったスタッフがひとりまたひとりと殺されていく話。ラストがいまいちピントこなかった。
 「こうとげい」は、旅行先で奇妙な体験に巻き込まれた新婚夫婦の話。それなりに怖いのだけれど、オチがいまいちピンとこなかった。
 「うらみせんせい」は、気がついたら小学校の中にいて、そこから抜け出せなくなった子どもたちが辿る恐怖体験を描いたもの。なかなかエグイ描写のある作品。
 「涸れ井戸の声」は、「涸れ井戸の声」というこれ以上はないというほど恐ろしい短編小説を巡る物語。読んだという人間は大勢いるのだけれど、どうすれば読めるのか、そしてどういう内容なのか、どうしても判明しない。これは、なかなか面白かった。
 「怪談怪談」は、肝試しをした子どもたちの話や、霊能者をめぐる話などがランダムに並んでいて、最後に全体像が浮かび上がってくるという話。これまた、ラストがいまいちピンとこない。
 いまいちオチにピンとこない作品もあったのだけれど、それでもボーッと読んでいると奇妙な雰囲気が染み込んでくるような作品が並んでいたという印象。グイグイ読ませるというよりも、なんとなくボーッと読まされてしまったという感じの短編集だった。