読書

【読書】今野敏『任侠学園』中公文庫

今野敏『任侠学園』中公文庫を読了。 潰れそうな出版社を立て直した阿岐本組の組長阿岐本雄造がこんど手を出したのは、荒れ果てた高校だった。窓硝子は割られ、正門にはスプレーで落書きがされ、校庭の手入れさえされていない学校の経営を組長が引き受けてし…

【読書】ダフネ・デュ・モーリア『レイチェル』創元推理文庫

ダフネ・デュ・モーリア『レイチェル』創元推理文庫を読了。 亡き父に代わりわたしを育ててくれた、兄とも父とも慕っていた従兄のアンブローズが、旅先のイタリアでわたしの遠縁にあたるレイチェルという女性と結婚したと連絡が入る。すぐにアンブローズが帰…

【読書】ホレス・マッコイ『屍衣にポケットはない』新潮文庫

ホレス・マッコイ『屍衣にポケットはない』新潮文庫を読了。 ホレス・マッコイを読むのは、角川文庫の『彼らは廃馬を撃つ』、ハヤカワ文庫の『明日に別れの接吻を』に次ぐ3冊目。3冊すべてが異なる出版社から出たわけだけれど、まさか新潮文庫から出ようとは…

【読書】今野敏『任侠書房』中公文庫

今野敏『任侠書房』中公文庫を読了。 昔気質の任侠団体・阿岐本組が、なぜかつぶれかけている出版社の経営に乗り出してくる。なぜかといえば、組長・阿岐本雄蔵には思いつきで行動を起こすというクセがあったからだ。かくして、代貸の日村は、組長の気まぐれ…

【読書】リチャード・マシスン『激突!』ハヤカワNV文庫

リチャード・マシスン『激突!』ハヤカワNV文庫を読了。 おそらく本書を読むのは、今回で3回目ぐらいだろう。なにげなく表題作を読み出したら、またしても止まらなくなってしまった。やはり、この表題作は面白い。スピルバーグの映画も傑作だと思うけれど、…

【読書】ゾラン・ジヴコヴィチ『本を読む女』盛林堂ミステリアス文庫

ゾラン・ジヴコヴィチ『本を読む女』盛林堂ミステリアス文庫を読了。 ゾラン・ジヴコヴィリ・ファンタスチカと銘打たれたシリーズの第2弾で、今回は本を読むことを生きがいにしているタマラさんという女性が遭遇する、本をめぐる8編の奇妙な物語が収録され…

【読書】カラサキ・アユミ『古本乙女、母になる』皓星社

カラサキ・アユミ『古本乙女、母になる』皓星社を読了。 古本マニアの日常あるあるを4コママンガにした『古本乙女の日々是口実』の著者によるエッセイ集。母親になって自由に古本漁りができなくなりながらも、古本が買いたくて買いたくてしかたのない日々の…

【読書】西村寿行『地獄(下巻)』徳間ノベルス

西村寿行『地獄(下巻)』徳間ノベルス西村寿行選集を読了。 地獄は釈迦が民衆を騙すために作り上げた謀略で、死んで冥界に来た亡者は奴隷にされ、ある者は肥料に、ある者は食料に、そしてとりわけ美しい女性は性の奴隷にされている。隣接するキリスト冥界の…

【読書】西村寿行『地獄(上巻)』徳間ノベルス

西村寿行『地獄(上巻)』徳間ノベルス西村寿行選集を読了。 なんともまあ、とんでもない小説である。西村寿行が各社の担当編集者らを招いて伊豆大島で釣りをするが、その夜、寿行がさばいたトラ河豚の毒にあたって全員死んでしまう。そして、気がつけば地獄…

【読書】岩井圭也『完全なる白銀』小学館

岩井圭也『完全なる白銀』小学館を読了。 かつてマッキンリーと呼ばれていた北米最高峰の山、デナリ。アラスカのサウニケという地球温暖化によって海に沈みつつある島で生まれ育ったリタは、女性による初の冬期単独登頂に挑戦するが、下山の途中で消息不明と…

【読書】富田常雄『天にひらく窓』東方社

富田常雄『天にひらく窓』東方社を読了。 久しぶりに富田常雄の小説を読んでみた。 隠居生活をしている元陸軍少将の父(62歳)、商事会社勤務の長男雄一郎(32歳)、アルバイトとして子どもに日本舞踊を教えている長女の奈美子(24歳)、新聞社に勤めだした…

【読書】今村昌弘『屍人荘の殺人』創元推理文庫

今村昌弘『屍人荘の殺人』創元推理文庫を読了。 まず最初に白状しておくが、自分はいわゆる謎解きをメインとする本格ミステリが苦手だ。読んでいる途中でなにがなんだかよく分からなくなって、どうでもよくなってしまうことが頻繁にあるからだ。だから、本書…

【読書】森見登美彦『シャーロック・ホームズの凱旋』中央公論新社

森見登美彦『シャーロック・ホームズの凱旋』中央公論新社を読了。 なんとも奇妙な小説である。なにしろ、あのシャーロック・ホームズが登場する小説でありながら、舞台はいつもの森見登美彦作品同様、京都なのだから。ロンドンに住むホームズが京都へやって…

【読書】丸山正樹『デフ・ヴォイス』創元推理文庫

丸山正樹『デフ・ヴォイス』創元推理文庫を読了。 埼玉県警の事務職員であった荒井は、ある理由から県警を去り、再就職のために手話通訳士の資格をとる。ろう者の家族に育った荒井は、子どもの頃から家族の通訳をしていたため、手話は使い慣れていたのだ。そ…

【読書】池央耿『翻訳万華鏡』河出文庫

池央耿『翻訳万華鏡』河出文庫を読了。 ハモンド・イネスの諸作、J・P・ホーガンの『星を継ぐもの』などなど、多くの冒険小説、SF、ミステリーでお世話になった翻訳家・池央耿による著書。てっきり、翻訳業界の裏話や苦労話が読めるものと期待して手を出…

【イベント】東京創元社新刊ラインナップ説明会2024

東京創元社の「新刊ラインナップ説明会2024」というイベントで飯田橋まで出て行く。 ネットで参加者を募集していたので、さほど何も考えずに応募したら「厳正なる抽選の結果、お席をご用意させていただきましたことをお知らせいたします」というメールが届い…

【読書】宮島未奈『成瀬は信じた道をいく』新潮社

宮島未奈『成瀬は信じた道をいく』新潮社を読了。 地元で活躍している人を調べて発表するという学校の課題に、成瀬と島崎のゼゼカラを選んだ小学校4年生の北川みらいが、成瀬に弟子入りするまでを描く「ときめきっ子タイム」。 成瀬の大学受験にふりまわされ…

【読書】原田ひ香『古本食堂』ハルキ文庫

原田ひ香『古本食堂』ハルキ文庫を読了。 神保町で古本屋を営む兄が亡くなり、その整理のために北海道から上京してきた鷹島珊瑚は、兄が大切にしていた本を処分することができず、店を引き継いで、店で本を売ることで兄の蔵書を処分していこうとする。だが、…

【読書】冲方丁『骨灰』角川書店

冲方丁『骨灰』角川書店を読了。 大手デベロッパーのIR部(投資家向け広報部)危機管理チームに所属する松永光弘は、高層ビルの地下建設現場での事故を示唆するツイートの調査のために、地下深くへと降りていき、そこで異様な光景に遭遇する。異常な乾燥と、…

【読書】宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』新潮社

宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』新潮社を読了。「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」 中学2年生の夏休み、閉店することになった地元のデパート「西武大津店」に毎日通い、地元のテレビ局が閉店までカウントダウン中継をおこなう放送に、毎日…

【読書】かんべむさし『水素製造法』徳間文庫

かんべむさし『水素製造法』徳間文庫を読了。 SNSで何人もの本読みがこれを読んで爆笑したというので、苦労して手に入れて読んでみたのだけれど、自分にはぜんぜん刺さらなかった。爆笑どころか、クスリともしなかった。こういうのは、相性だから仕方がない…

【読書】マネル・ロウレイロ『生贄の門』新潮文庫

マネル・ロウレイロ『生贄の門』新潮文庫を読了。 末期癌の息子を抱えた女性捜査官のラケルは、メンシニェイラと呼ばれる心霊治療師に最後の望みを託して、彼女の住むガリシア地方へと異動を申し出る。そこでラケルが遭遇したのは、人里離れた山の頂、巨大な…

【読書】マーク・グリーニー『暗殺者の屈辱(上下)』ハヤカワ文庫NV

マーク・グリーニー『暗殺者の屈辱(上下)』ハヤカワ文庫NVを読了。 暗殺者グレイマンことコート・ジェントリーは、ロシアからの金の流れを明らかにすることのできるデータを収めたiPhoneの確保をCIAから依頼されて動き出す。本来ならCIAから追われ…

【読書】谷良一『M-1はじめました』東洋経済新報社

谷良一『M-1はじめました』東洋経済新報社を読了。 先日読んだ『笑い神 M-1、その純情と狂気』が外部の人間によるノンフィクションなら、本書はM-1を作り上げた当事者による現場レポート。完全に死に体となっていた漫才というジャンルを甦らせるためのプロジ…

【読書】アリステア・マクリーン『女王陛下のユリシーズ号』ハヤカワ文庫NV

アリステア・マクリーン『女王陛下のユリシーズ号』ハヤカワ文庫NVを読了。 読書記録をチェックすると1979年、1985年、2002年に読んでいる。たぶんそれ以前にも読んでいるので、おそらくは今回が5回目の読書ということになるようだ。 前回読んだ時の感想を…

【読書】中村計『笑い神 M-1、その純情と狂気』文藝春秋

中村計『笑い神 M-1、その純情と狂気』文藝春秋を読了。 漫才の頂点を決める大会「M-1」の歴史を、〈笑い飯〉というコンビを中心として描いたノンフィクション。 実は〈笑い飯〉については、「鳥人」というネタだけはやたらとシュールで面白かったという印象…

【読書】川内康範『銀座旋風児』穂高書房

川内康範『銀座旋風児』穂高書房を読了。 終戦のどさくさの中で、軍の所有する数千万円に値する貴金属を大陸から持ち逃げした特務機関の4人の男たちがいた。そのことを知った銀座旋風児の呼び名を持つ二階堂卓也は、犠牲者となった男の娘とともに4人組の行方…

【読書】芦辺拓『奇譚を売る店』光文社文庫

芦辺拓『奇譚を売る店』光文社文庫を読了。 「——また買ってしまった。」というフレーズで始まる6篇の幻想的な作品を収めた短編集。いずれも古書店で手に入れた本もしくは資料がきっかけとなる奇妙な物語なのだが、「——また買ってしまった。」という導入部の…

【読書】逢坂冬馬『歌われなかった海賊へ』早川書房

逢坂冬馬『歌われなかった海賊へ』早川書房を読了。 デビュー作の『同志少女よ、敵を撃て』が凄すぎたので、この著者は2作目を書けるのだろうか、どうあがいたところでデビュー作に匹敵する作品を書くことは無理なのではないだろうか、そう思っていた。 が、…

【読書】デイヴィッド・マレル『蛍』早川書房

デイヴィッド・マレル『蛍』早川書房を読了。 『ランボー』の原作者として知られる著者が、15歳の息子が癌で亡くなったときの体験を小説にしたもので、ロバート・ラドラム、スティーヴン・キングが絶賛している。なんとも不思議な小説で、ファンタジーの趣き…