★少林寺 怒りの飛龍拳

 シェー・ミャオ(謝苗)主演のクンフー映画少林寺 怒りの飛龍拳(方世玉之盖世英雄)』を観る。
 反清復明を旗印とする紅花会の陳総舵主が朝廷の暗殺組織、血滴子によって殺害される。だが、真の犯人は紅花会を我が物にせんとする副総舵主の白眉だった。次に白眉は、紅花会の支配者になるために必要な令牌を持つ陳総舵主の義理の息子、方世玉(シェー・ミャオ)を狙うのだが……。
 なんというか、いろいろな意味でダメダメの作品だった。まずは脚本がまったくダメダメ。追っ手から逃れるために方世玉は長官の娘を人質にするのだけれど、この娘を連れ回す意味がわからん。そして、いつの間にかこのふたりはお互いに恋愛感情を持つようになるのだけれど、そこに至る描写がろくにないので、どうしてこのふたりが恋に落ちるのか、まったく説得力がない。ストックホルム症候群? 逃げ込んだ紅花会の村で方世玉が幼なじみと偶然の再会を果たし、結婚式をあげることにして白眉を呼び寄せるという展開も意味不明。報奨金目当てで方世玉を追っていた賞金稼ぎの男が命をかけて方世玉を守るようになる経緯も、そこに至る心理描写が希薄なので説得力を持たない。そして、なによりも、幼なじみの女性が盾となって死闘を繰り広げている場面から、「逃げて」と言われて本当に逃げるか? そこは、命をかけて女性を守る場面だろ。本当に、脚本が薄すぎて説得力がなさすぎる。
 そして、アクション演出もいまいち。ワイヤーワークを使いまくっているのだけれど、香港映画に比べて中国映画はワイヤーワークの使い方が下手なんだよなあ。しかも、アクションを細かいカット割りを使いまくって見せようとしているので、アクションの全体像がいまいちよく分からなかったりもする。シェー・ミャオは本当に動ける俳優なのだから、下手な小細工をしない方が迫力のあるアクション場面が撮れるのに。実に残念。
 主役のシェー・ミャオは子役時代に『新少林寺伝説』『D&D 完全黙秘』でジェット・リーの息子を演じていた根っからのアクション俳優である。そのシェー・ミャオがジェット・リーも演じていた方世玉を演じているのだから、そりゃ期待したのに。
 監督・脚本は『イップ・マン 宗師』『イップ・マン 黎明』のリー・リーミン。『イップ・マン 宗師』を観た時の感想を見直してみると、「いろいろ納得のいかないストーリー展開もあって、思わず大きな溜息をついてしまったよ。」と書いてある。やっぱり、ダメダメな監督なんだ。
 そして、もっとも意味不明なのが『少林寺 怒りの飛龍拳』という邦題。「少林寺」なんて、まったく関係ないじゃん。まあ、方世玉が少林寺で修業したという伝説はあるにしても、本作には少林寺はかけらたりとも出てきていない。そして、「飛龍拳」なんて拳法も、どこにも出てこない。どうしてこの内容で『少林寺 怒りの飛龍拳』などという邦題がついたのだろう?