
シェー・ミャオ主演のアクション映画『東北警察故事』を観る。
山東省浜州で警察官をしている李紅旗(シェー・ミャオ)。春節の休暇をとった紅旗は、恋人の桃子(グー・ジン)とともに、彼女の故郷である淞北市を訪れる。そこで、彼女の実家に挨拶に行くのだが、彼女の父に気に入られた紅旗は、地元の名士が集まるパーティにひっぱっていかれる。ところがそこにオンラインカジノを立ち上げるのに地元の実業家たちを巻き込もうとする肖家三兄弟の一味が乱入してくる。
彼らは、地元住民を違法賭博に誘い込み、巨額の借金を背負い込ませ、あげくの果てに殺人にも手を染めていた。地元の実業家たちを脅迫して事業に協力させ、みるみるうちに勢力を拡大していく肖家三兄弟。紅旗は休暇を返上し、地元警察と協力して捜査に乗り出すのだった。
タイトルからジャッキー・チェンの『ポリス・ストーリー/香港国際警察(警察故事)』を連想するかもしれないが、あれほど派手ではない。というよりも、どちらかというと地味な低予算アクション映画である。映画というよりも、テレビの刑事ドラマといったスケールの作品だ。実際に、本作は劇場公開はされていない。愛奇芝という動画配信サイトによって制作され、ネット配信のみで公開された作品なのだ。淞北市という架空の地方都市が舞台となっており、スケールもこじんまりとしている。ランニングタイムも83分と実にコンパクトだ。
しかし、アクションには力が入っている。とりわけ頭が弱いが肉体は異様に頑健という3兄弟のひとり肖二毛との肉弾戦はなかなかリアルだ。実に痛そうなのだ。
そして、シェー・ミャオが走る走る。逃げる犯人を追って走り回り、銃を構えた相手にも真っ正面から全力疾走して突っ込んでいく。このスピード感が実にいい。
クライマックスは肖家三兄弟の中の頭脳派、アメリカ留学経験のある相手とのバスの中でのバトル。えっ、こいつ頭脳派なのに、こんなに格闘ができるんだ!とびっくりしたが、狭い空間での激しい肉弾戦はなかなか見ごたえあり。これまた実に痛そうで、あちこち骨折していそうだ。
地方都市が舞台で、敵対する相手もそれほど大きな組織というわけではなく、派手な爆破シーンとか大向こうをはったアクションシーンなどはない。しかし、刑事ドラマってのはそもそもそういうものなので、無駄にスケールを大きくすることなく、しっかりコンパクトにまとめている好感の持てる作品となっている。
ちなみに、「紅旗」という名前がいかにも中国的だなあなどと思ったのだけれど、桃子の父から「お前はいったい何歳だ。やたらと古臭い名前だな」などと突っ込まれていたので、そういう雰囲気になる名前であるらしい。
主役の李紅旗を演じているのは『盲剣楼』『盲剣楼 無明の執行人』などのシェー・ミャオ(謝苗)。ジェット・リー主演の『新・少林寺伝説』『D&D/完全黙秘』、チョウ・ユンファ主演の『ゴッド・ギャンブラー 完結編』などでふてぶてしい面構えの子役を演じていたが、大学卒業後に本格的に映画界に復帰し、『タイガー・マウンテン 雪原の死闘』『西遊記 孫悟空vs7人の蜘蛛女』『少林寺 十八の羅漢』『武神』『イップ・マン 立志』などに出演している。最新作は谷垣健治監督の『火遮眼(The Furious)』で、すでに各国で公開されて話題となっているのだけれど、日本では来年になってからの公開が予定されている。
監督は、『盲剣楼 無明の執行人』のアクション演出を担当していたチン・ポンフェイ(秦鵬飛)。続篇の『東北警察故事2』では『盲剣楼 無明の執行人』のヤン・ビンジア(杨秉佳)との共同監督を務めており、『東北警察故事3』では監督の座を降りて制作にまわっている。この続篇の方も観なければ。
なお、自分は本作を、YouTubeにあった中国語字幕(簡体字)と英語字幕の入ったもので観たのだけれど、英語字幕がやたらと長く、意味がわかりにくくて閉口した。なにしろ「二嫂」と言うたびに「THE SECOND SISTER-IN-LAW」と訳されてしまうので、そりゃ長くなる。「桃子」が「peach」になったり、「こいつは俺の未来の娘婿だ」が「My future uncle」となったり、とにかくあちこちで英語字幕が変。なんで「娘婿」が「叔父さん」になるんだ? おそらく中国語字幕から自動翻訳でつけた字幕なのだろう。配信元の愛奇芝の有料会員になれば日本語字幕付きでも観られるようなのだけれど、これもおそらく自動翻訳でつけた字幕なのではないかと思われる。