【映画】ディープ・シー・ミュータント

 中国のモンスターパニック映画『ディープ・シー・ミュータント』を観る。
 絶海の孤島で巨大企業カルシン・グループが新薬の開発のための生物実験をおこなっていた。その結果生み出された超巨大な蛇が施設を壊滅に追い込み、無数の蛇が施設の外へと抜け出した。
 それから1年。その島の近くを通った豪華客船に無数の蛇が海から襲いかかり、船の中は大パニックに陥る。さらには超巨大な蛇が豪華客船に襲いかかる。その船に乗り込んでいた元救助隊員のチン・ウーは、生き残った人々を率いて救難ボートに乗って海へと逃げ出す。九死に一生を得た一行は近くの島に上陸するのだが、その島には危険な生物が棲息していて、彼らに襲いかかるのだった。
 というわけで、秘かに島で行われていた生物実験が化け物を生み出して主人公たちを危地に追いやるという、いままで何度観ただろうかというほどよくある設定のモンスターパニック映画である。まあ、よくある設定でも、演出がよければいくらでも楽しめるのだけれど、本作に限っていえば、ぜんぜんダメ。唐突に豪華客船に海からやってきた無数の蛇が襲いかかるのだけれど、なんで蛇が豪華客船に襲いかかるのかという説明がまったくないし、船の中のどこに逃げ込んでも必ず蛇が入り込んでくるという展開も謎すぎる。唯一蛇が入ってこないのが主人公たちが逃げ込んだ冷凍室なのだけれど、寒くて震えている主人公たちの様子が、とても零下25度には見えない。蛇がうにょうにょひしめきあう狭い廊下なのに、そこを走り抜ける主人公たちにだけは蛇が襲いかからないのも納得がいかないし、そもそも主人公たちにいまいち危機感が感じられない。役者たちの演技が、CGを相手にするのに慣れていないのか、実にわざとらしかったり、素人っぽかったりして、臨場感がまったくないのだ。
 しかも、作り手の独りよがりの演出や、むりやりすぎる展開があちこちに観られ、最後までつきあうのがなかなかしんどかった。
 中国のこの手のモンスター映画はいままでに何本も観ているのだけれど、その中でいちばん退屈だったのが本作だったと言い切ってしまおう。なんのかんの言いながら、この手のC級モンスター映画は、たいていはそこそこ楽しませてくれるものなんだけどなあ。
 ちなみに、ただひとり、よく知っている俳優が出ていた。なんと、『男たちの挽歌』のレイ・チーホンがカルシン・グループの社長の役で出ていたのである。ううっ、なにもこんな映画に出なくてもいいだろうに。

【映画】48時間 PART2 帰って来たふたり

 『48時間 PART2 帰って来たふたり』を観る。
 サンフランシスコ市警のジャック・ケイツ刑事(ニック・ノルティ)は、暗黒街の正体不明の支配者“アイスマン”を追い続けていたのだが、いま一歩のところで“アイスマン”の正体につながる人物に逃げられてしまう。だが、何故か逃亡した“アイスマン”の手下はレジーエディ・マーフィ)の写真を持っていた。“アイスマン”の正体を知るレジーを殺害するために、殺し屋が雇われていたのだ。
 前作ではたしかあと半年で出所となるはずだったレジーだったが、なぜかさらに5年間も臭い飯を食わされることになっていた。そのようやくの出所を迎えにジャックがやってくる。“アイスマン”をつかまえるためにレジーに協力させるためだが、「お前に協力するのは二度とごめんだ」と、すげなく断るレジー。しかし、出所したばかりだというのに狂暴な二人組のバイカーに襲われ、なんとか九死に一生を得るのだけれど、今度は現金を隠して置いた愛車が爆破され、結局はまたしてもジャックに協力することになるのだった。
 前作が作られたのが1982年で、本作が1990年。なんと、8年ぶりでの続篇である。監督は、前作に引き続いてウォルター・ヒルが担当している。よって、アクションシーンの演出がなんとも男臭い。スマートなアクションではなく、骨太のアクションなのだ。
 驚いたのは、クレジットの順番がニック・ノルティよりもエディ・マーフィが先になっているということ。前作のDVDを引っ張り出して確認すると、前作ではニック・ノルティの名前の方が先に出ていた。つまり、1作目が作られてから本作が作られるまでに、役者としての格が逆転してしまっていたのだ。8年の間に『ビバリーヒルズ・コップ』があり、エディ・マーフィはバリバリの超売れっ子となっていた頃の作品なのである。
 しかし、こうなると今度は『ビバリーヒルズ・コップ』が観たくなるなあ。今年はNetflixでシリーズ第4作が観られることになるらしいので、いまのうちにシリーズを見直しておくのもいいかもしれない。

【映画】バッドランド・ハンターズ

 Netflixオリジナルの韓国映画『バッドランド・ハンターズ』を観る。
 大地震によって壊滅的な被害を受け、無法地帯と化したソウル。かろうじて生き延びた人々は、小さなコロニーを作り、僅かな水と食料にすがって細々と暮らしていた。
 18才になるスナ(ノ・ジョンウィ)は、バスという村に祖母とともに暮らしていたが、その村に豊富な水に恵まれた暮らしをしているという伝説のマンションからの使者が現れる。マンションでは国の未来のために、若者を家族とともに迎え入れているのだという。祖母とともにマンションに向かうことを決意するスナだったが、実はそのマンションでは人間を超人に進化させるための人体実験がおこなわれており、その研究のために若者が必要とされていたのだった。
 バスの村でスナの保護者的な役割をしていたナンサン(マ・ドンソク)と、彼の弟分のジワン(イ・ジュニョン)は、マンションから逃亡してきた元特殊部隊の隊員だったイ・ウンホ(アン・ジヘ)から事実を知らされ、スナを取り戻すためにマンションに向かう。だが、その前に立ちふさがったのは、不死身と化した軍人たちだった。
 大地震によって壊滅したソウルの街というのは、ほとんど『北斗の拳』もしくは『マッド・マックス』の世界である。力のみが支配する非情の世界だ。その非情の世界において、人情に生きる男、それがマ・ドンソクである。相変わらず、ひょうひょうとしながらめっちゃ強い主人公を演じている。
 肉弾戦から銃撃戦までアクションがてんこ盛りで、そのアクションシーンが実にいい。監督は『犯罪都市』などで武術監督を担当していたホ・ニョンヘンとのことで、なるほどアクションシーンに力が入っているわけだ。
 マ・ドンソクのみならず、アン・ジヘのアクションも見ごたえたっぷりで、これが実に素晴らしい。きれいなお姉さんのキレのいいアクションというのは、僕の大好物なのだ。めちゃくちゃかっこいいので、他に何に出ていたのか調べてみたら、東京国際映画祭で上映された『スレイト』の主演女優さんなのだという。なるほど、見惚れてしまうほどの素晴らしいアクションを次々とこなしてくれるのも納得だ。
 そして、ヒロインのスナを演じているノ・ジョンウィがこれまた可愛いんだ。透明感のある美少女でありながら、芯の強さを感じさせる女優さんで、彼女の存在感もなかなかのものだった。
 なんの前情報もないまま、ふらっと観てしまったのだけれど、これはなかなかの拾いものでありました。

【読書】西村寿行『地獄(下巻)』徳間ノベルス

 西村寿行『地獄(下巻)』徳間ノベルス西村寿行選集を読了。
 地獄は釈迦が民衆を騙すために作り上げた謀略で、死んで冥界に来た亡者は奴隷にされ、ある者は肥料に、ある者は食料に、そしてとりわけ美しい女性は性の奴隷にされている。隣接するキリスト冥界のたくらみによって冥界に送り込まれた西村寿行と担当編集者たちのヘナチョコ軍団は、そのことを知り、釈迦打倒のために立ち上がる。
 だが、その前に立ちふさがったのは、かつて釈迦と闘って破れ、いまは釈迦の腹心となっている閻魔大王なのであった!
 というわけで、西村寿行のとんでも小説の下巻である。これがSF専門誌である『SFアドベンチャー』に連載されたのであるから、徳間書店の懐の深さには恐れ入るしかない。『SFマガジン』だったら、絶対にこの小説が掲載されることはなかっただろう。まあ、『SFマガジン』に連載されたなら、賛否激突する論争が繰り広げられただろうから、それはそれで有意義なのかもしれないが。
 しかし、冥界を舞台に釈迦や閻魔大王に闘いを挑んでいくというとんでもない物語でありながら、その価値観の最上位には常にセックスがあるというのが、さすがは西村寿行だ。釈迦だろうが、閻魔大王だろうが、常に美貌の亡者を何人もはべらせて、四六時中セックスを楽しんでいるのである。西村寿行一行もスキさえあれば美人の亡者に手を出そうとするし、釈迦を倒したあかつきには性の楽園を作るぞと宣言したりして、その価値観のシンプルさにはある意味感心してしまう。
 巻末には、西村寿行と小説内に登場させられた実際の編集者たちによる座談会が収録されているのだけれど、誰も「オレをあんなキャラクターとして描いてひどすぎる!」と文句をつけたりせずに、大まじめに仏教論、宗教論をかわしている。いやいや、もっと素直に「このクソ寿行、おれをあんな風に描きやがって!」と糾弾した方が面白いのに。

【読書】西村寿行『地獄(上巻)』徳間ノベルス

 西村寿行『地獄(上巻)』徳間ノベルス西村寿行選集を読了。
 なんともまあ、とんでもない小説である。西村寿行が各社の担当編集者らを招いて伊豆大島で釣りをするが、その夜、寿行がさばいたトラ河豚の毒にあたって全員死んでしまう。そして、気がつけば地獄の三途の河原にいた。そこから、地獄の鬼や冥府軍の繰り出す異形の者たちから逃げ惑う日々が始まるのだ。そういう話と思って読んでいると、なんと、いつの間にやら冥界を舞台に、なんとも壮大な物語が展開されてしまっているのだ。冥府を支配する組織に対して、西村寿行たちが徒手空拳が闘いを挑むという物語になってしまうのである。しかも、仏教の冥府軍は隣接するキリスト教の冥府軍と対立しているとか、とんでもない設定なのだ。むやみやたらと壮大な物語なのだ。が、にもかかわらず、まったく壮大さが伝わって来ない。なにしろ、徹頭徹尾、低俗きわまりない西村寿行たちの視点から描かれる物語なのである。高空から見下ろすような視点には絶対にならないのだ。三途の川を渡ってくる亡者の中にいる美女を尻の方から犯したいとか、そういうレベルの話題から離れようとしないのだ。これがまあ、西村寿行なんだよなあ。『百億の昼と千億の夜』を西村寿行が書いたら、こんな小説になっちゃいました、てへ、みたいな小説なのだ。
 それにしても、なにがとんでもないといって、登場する担当編集者らが、すべて実在の人物が実名で登場してきているのである。しかも、描写が容赦ない。どの人物も、遠慮容赦なく徹底的にこきおろされるのである。ここまで書いて許されるのかと呆れかえるほど、ボロクソに書かれているのである。小説に実名で出されて、しかもありえないほど露骨に悪口雑言が書かれるって、耐えられないぞ。
 が、しかし、西村寿行本人についても、けっこうありえないほど露悪的にボロクソに書かれているのである。女性秘書を愛人にしているとか、人妻をものにしているとか、どこからどこまでが本当なのかは分からないけれど、どうしようもない低俗な人物として描かれているのである。
 冥府軍による西村寿行の評価など、次のようなものなのであったりする。
西村寿行と申すは、大いなるうつけ者にございます。人倫を知らず、仏心を知らず、げに、むくつけき無学文盲の徒にてある由。アルコールと女の尻をとれば西村の小説はおよそ文章の態をなさぬとか。」
 冥府をさまよいながら西村寿行の脳裡にあるのは、次のような想念でしかないのだ。
「いつの間にか、女のことに思いを切り替えていた。女の肌、乳、尻、性器、太もも、足--抱いたときの感触。ああ、やりたいと、西村は胸中に重い吐息を落とした。」
 どんなに壮大な物語になろうとも、西村文学はかくも低俗なのである。
 とにかく、下巻に突入だ。

【映画】48時間

 ニック・ノルティエディ・マーフィ主演のアクション映画『48時間』を観る。
 脱走した凶悪犯のギャンズによって同僚の刑事を殺されたサンフランシスコ市警の刑事、ジャック(ニック・ノルティ)は、犯人のかつての仲間で服役中のレジーエディ・マーフィ)を48時間という期限付きで仮釈放させ、捜査に協力させる。ギャンズの狙いは、かつて賭博場から盗んでレジーが隠した50万ドルだった。それを守るためにもジャックに協力するレジーだったが、この二人はなにかとぶつかり合ってしまう。だが、ギャンズを追ううちに、次第に互いを認め合うようになるのだった。
 実に久しぶりに観たのだけれど、細かい部分はきれいさっぱり忘れていたし、場面によっては記憶していたのとぜんぜん違っていたのにはビックリ。自分の記憶力の曖昧さに呆れかえる。ヘタすると、『ビバリーヒルズ・コップ』と記憶がごっちゃになっていたりして、本当に情けない。
 それはそれとして、やっぱりウォルター・ヒル監督の映画はいい。ニック・ノルティエディ・マーフィも実にかっこいいのだ。ニック・ノルティが両手でがっちり銃を握りしめ、エディ・マーフィが片手で軽々と銃を構えるあたりの対比もお見事。さりげないところで、ふたりのキャラクターが表現されている。
 ちなみに、アメリカのポスターだとニック・ノルティエディ・マーフィが同等に扱われているのだけれど、日本のポスターではニック・ノルティだけが大きく描かれている。この時点で、日本ではほとんどエディ・マーフィが知られていなかったせいなのだろうか。
 さて、こうなると次はやっぱり『48時間 PART2 帰って来たふたり』を観ないといけないな。こちらは、さらに内容を覚えていないのだけれど。

【映画】犯罪都市 THE ROUNDUP

 韓国映画犯罪都市 THE ROUNDUP』を観る。マ・ドンソク主演の『犯罪都市』のシリーズ第2作だ。
 ソウル衿川警察署の刑事マ・ソクトは、犯罪者引き渡しのために上司とともにベトナムに派遣される。だが、韓国人を誘拐するカン・ヘサンという凶悪犯罪者がベトナムにいることを知り、捜査権がないにもかかわらず強引に捜査に乗り出す。一方、息子を誘拐されて身代金をとられたあげくに息子を殺害された韓国の富豪が、カン殺害のために殺し屋を送り込んでくる。殺し屋を返り討ちにしたものの、身代金を奪い返されたカンは、金を取り戻すために韓国に乗り込んでくるのだった。
 というわけで、前半はベトナムが舞台で、捜査権がないにもかかわらず相変わらずの強引さでカンを追い求めるソクトの活躍が描かれ、後半では韓国を舞台にカンとソクト率いる警察チームとの壮絶なバトルが描かれていく。
 前作同様、ストーリーは非常にわかりやすく、シンプルに楽しむことができる。とりわけ第2作目となる本作では、上司のチョン・イルマン班長(チェ・グィファ)とのやりとりが前作以上に楽しめる。班長、口先だけの男かと思いきや、けっこうやる時にはやるじゃん。
 クライマックスは、バスの中での肉弾戦で、狭い空間をフルに使ったバトルが展開される。マ・ドンソクのパワフルなアクションは、なかなかな見応えがあっていい。
 そして、やっぱり血の量が半端ない韓国映画なのだった。とりわけ今回の悪党はマチェーテを主な武器としているので、それでぶった切るようなシーンが半端なく、見るからに痛い。また、ナイフを持たせればザックザクと執拗に突き立てるし、首筋をスパッと切り裂くし、相変わらず容赦がないのだった。
 注目すべきは、カンからの身代金請求の電話を受ける社長夫人。パク・チヨン演じるこの社長夫人、なんとも存在感がありすぎて、これだけ存在感があるからには絶対に単なる社長夫人じゃなくて、なにかしら裏があるよな、犯人と繋がっているんじゃないの、とか思ってしまったのだけれど、それは勘ぐりすぎというものなのでありました。
 唯一納得がいかなかったのは、身代金を持ち逃げしようとするチャン・イス(前作のイス組の組長が、本作では落ちぶれて不法入国者偽装結婚斡旋所をやっている)の車に、カンの車が突っ込んでくるシーン。あれ、どうしカンはイスの車がいる場所を知ったのか、どうしても分からなかったのだけれど。