★南少林 詠春拳誕生

 『南少林 詠春拳誕生(南少林詠春拳之开山始祖)』を観る。

 時は清朝時代。父を政敵にとらえられた五枚は助けを求めて南少林寺に現れる。だが、俗世のあらそいに関与しないという原則ゆえに和尚は助けをこばむ。しかし、その南少林寺にいたのが、五枚のかつての婚約者であった至善であった。至善は五枚を助けるために、女性にむいた拳法を編み出し五枚にさずけるのだが……。

 というわけで、これが『イップ・マン』で有名になった詠春拳となるのだが、詠春拳の誕生については『レディ・ファイター 詠春拳伝説』でミシェル・ヨーが演じた厳詠春が始祖となった説が有名だ。本作では少林寺にかけられていた額に書かれた文字から詠春拳という名前がついたことになっているが、一般的には厳詠春の名前からとられたとされている。が、その厳詠春の父が拳法を習ったのが本作の主人公である五枚尼姑と至善和尚であるので、詠春拳の源流が本作にあるように五枚尼姑と至善和尚であるというストーリーもまったくの作り物というわけではない。
 しかし、なんともじれったい映画である。五枚は繰り返し繰り返し「父を助けてほしい」「父を見殺しにするのか」と和尚に迫り、和尚は繰り返し繰り返し「少林寺は俗世のあらそいに関わらない」と断り続ける。その繰り返しにいささかイライラさせられる。さらには、敵の襲撃で少林寺の僧兵が次々と血祭りにあげられていく間、ずっと読経を続ける和尚もどうかと思うぞ。そのくせ、いざとなると和尚自ら闘ったりもするのだけどね。だったら、最初っから闘えよ。
 まあ、そこはスルーしておこう。もっと驚くべき展開が控えているのだから。実はこの映画、冒頭で南少林寺が青幇と組んだ朝廷軍に襲撃されて壊滅状態となったところに、突如として現れた五枚によって救われるという展開のあと、回想場面に突入して、あとは延々とその回想場面が続いていくのである。いったい、この回想はいつまで続くのだろうと不安になるのだけれど、ずっとずっと回想場面が続くのだ。そして、ようやく回想場面が終わったと思ったら、驚愕の展開とともにあっさりと映画そのものが終わってしまうのである。
 調べてみると、どうやら本作は三部作として作られた映画の第一部なのだそうで。だから、回想場面が終わったあとの物語は、第二部、第三部をご覧下さいということであるらしい。でも、日本ではこの第一部しかビデオリリースされていないんだよね。いやはや、それはないでしょ。

 というわけで、いささか突っ込みどころ満載の作品ではあるのだけれど、アクションシーンはそれなりに充実している。ワイヤーワークがちょっと稚拙だったりするのだけれど、クンフーアクションはなかなか見ごたえがあるのだ。至善が詠春拳を編み出す時の動きとか、五枚がそれを学ぶシーンとかの動きにしっかりと説得力がある。

 ヒロインの五枚を演じているのはチェン・イーリンという女優さんなのだけれど、ちょっと顔つきがごついぞ。でも、アクションシーンの動きはなかなかのもの。
 至善を演じているのはシュー・チアンタオというアクションスターであるらしい。『黄飛鴻之王者無敵』という作品では黄飛鴻を演じているらしい。
 少林寺の裏切り者を演じているのはファン・ウェイペンという俳優で、『霊幻道士XII 英叔復活だョ!全員集合(一眉先生)』に出ているらしい。中国の俳優についてはよく知らないので、「らしい」ばかりで申し訳ないんだけれど。お笑いコンビ「コロコロチキチキペッパーズ」のナダルに似ていると思った瞬間から、なんでこいつが強いんだよ?という気分になってしまったのは、ここだけの話だ。
 監督はファン・シウミン(范秀明)とのこと。