【映画】南少林 拳法の覚醒

 中国映画『南少林 拳法の覚醒』を観る。
 原題は『南少林永春拳之突破重围』。『南少林 詠春拳誕生』『南少林 無双伝』に続く、詠春拳誕生秘話を描く〈南少林三部作〉の完結篇である。
 この三部作をちゃんとリリースしてくれたアメイジングD.C.さんには感謝しかない。1作目を観た時には「どうせ三部作の最初のこの1本をリリースしただけで、あとはスルーするんだろうな」ぐらいにしか思っていなかったのだ。疑ったりしてごめんなさい。

 清朝時代、青幇と組んだ朝廷の攻撃によって壊滅状態となった南少林寺。その南少林寺の継承を託された至善と五枚は、女性でも威力を発揮する詠春拳という武術を生み出す。だが、朝廷は執拗に至善を追い、南少林寺を徹底的に消し去ろうとしていた。
 敵に襲われて崖から転落し、川に流されてしまう至善。至善の死を信じられない五枚は、川に沿って至善を探し続けるのだが、記憶を失った至善は紅船で移動する旅芸人の一座に救われていた。記憶は失っても身体が武術を覚えているため、至善は船の上で旅芸人の一座に詠春拳を教えていく。しかし、そこにも青幇と手を組む野盗が襲いかかってくるのだった……。
 というのが、前2作のおおよそのストーリーで、いちおうこの2本で話は完結してはいる。が、本作ではさらにその後の、五枚の弟子である厳詠春が詠春拳に覚醒するまでが描かれる。

 またしても、南少林寺が朝廷に攻撃され、僧侶たちが散り散りとなっていく場面から物語は始まる。厳詠春は、逃げ延びた僧侶たちを引き連れて、第二部の舞台となっていた町に逃げ延びてくる。ここで紅船の一座と合流することになっているのだ。
 しかし、そこに青幇を引き連れた朝廷軍が追いついてくるのだった。

 というわけで、話そのものはいままでのパターンの繰り返しにすぎない。とはいえ、主人公はいままでの至善、五枚から厳詠春に交代して若返っているのでワンパターンという感じにはなっていない。それでいて、町医者とか、厳詠春の幼なじみの町医者の息子とか、旅芸人の蘇三娘とか、前作で馴染みとなったキャラクターが引き続き登場してくるので、シリーズとしての楽しさも味わえる。
 しかも、幼なじみの町医者の息子が、何年も前に分かれたままの厳詠春のことをずっと想い続けていたのだけれど、男装して登場してきた厳詠春にまったく気がつかず、同じく彼のことが忘れられないでいた厳詠春はそのことでヤキモキするというラブコメ要素まで入ってきているのだ。コミカルな描写も増えていて、だいぶ作品のテイストが変わってきている。
 その分、残念ながらアクション映画としての魅力は低減している。厳詠春を演じているチャイ・ティアンフイ、あまりアクションが得意な女優さんではなさそうだ。きりっとした顔立ちの美人で、これでアクションができたらサイコーなのに。で、町医者の幼なじみの武術家がその分アクションを担当してくれてはいるが、このアクションもいまいち。
 それでも、最後は至善から詠春拳を伝授された旅芸人の二人が闘いに加わり、盛り上げてくれている。

 まあ、絶賛はしないけれど、三部作を通して観ることの満足感は、それなりに味わえる作品でありました。
 ちなみに、日本版のポスターのデザインは映画の内容をほとんど反映しておりません。なんたって、主人公は女性の厳詠春なのですから。オリジナルのポスターと比較してみれば一目瞭然ですね。