★南少林 無双伝

 中国映画『南少林 無双伝』を観る。
 原題は「南少林永春拳之坚贞永护」。2022年の作品で、前に観た『南少林 詠春拳誕生』の続篇である。

 清朝時代、青幇と組んだ朝廷の攻撃によって壊滅状態となった南少林寺。だが、その南少林寺を継承するための鉢と袈裟は、死んだと思われていた至善に渡すようにと、五枚と妹弟子に託されていたのだった。だが、ようやく五枚が至善に辿り着いたとき、野盗に襲われていた少女を救おうとした至善は崖から転落して川に流されてしまう。
 と、ここまでが前作のお話。
 至善に渡すはずだった鉢と袈裟は、至善の弟子たちに渡されるのだが、裏切り者の出現でそれは青幇の手に渡ってしまう。至善の死を信じられない五枚は、川に沿って至善を探し続けるが、その途中でただひとり生き延びた至善の弟子に遭遇し、南少林を救うようにと依頼される。
 一方の至善は、川を流されているところを、紅船で移動する旅芸人の一座に救われるのだが、脳にできた血栓のためにそれまでの記憶をきれいに失っていた。一座を率いる人気スターの蘇三娘は、記憶を失った至善を一座で引き取ることにするのだが、そこに青幇と手を組む野盗が襲いかかってくるのだった……。

 主人公が記憶を失っていて、しかも脳血栓のためにすぐに倒れてしまうので、主人公によるアクションシーンはやや少なめ。
 でも、旅芸人一座のメンバーそれぞれのキャラクターがしっかり描かれていて、そこがなかなかほのぼのと楽しい。記憶は失っても、身体に叩き込まれた武術は忘れていないという設定で、至善が一座のメンバーに詠春拳を伝授するシーンなどもあり、クライマックスでは彼らが野盗や青幇を相手に闘う展開となる。そんなに短期間で武術をマスターできるのか?などという野暮な疑問は持たないようにしよう。
 また、当然の展開として蘇三娘が至善に恋心を持つようになり、記憶を持たない至善と手をつないで街を歩いたりするのだけれど、そこに五枚が現れてふたりの女性がひとりの男を奪い合って詠春拳で闘うという、なんとも恐ろしい展開になったりもする。
 というわけで、それなりにドラマも盛り込まれているので、そこそこ楽しめる作品に仕上がっている。とはいえ、第一部に比べてクンフーアクションのシーンがやや少なめなのはちょいと残念。

 詠春拳創始者である至善と五枚を主人公とする三部作の第二部が本作で、てっきり第一部だけが日本でリリースされるのだろうと思い込んでいたのだけれど、無事に第二部もリリースされたのは喜ばしいかぎり。これなら、第三部もリリースしてもらえるのではないだろうか。
 ちなみに、詠春拳創始者は厳詠春であるとよく言われるのだけれど、その厳詠春も、至善に命を救われ、五枚に弟子入りする少女として登場してくる。きっと、第三部ではこの厳詠春が大きく扱われるのではないだろうか。

 監督はファン・シウミンで、至善をシュー・チアンタオ、五枚をチェン・イーリン、蘇三娘をリー・メイワイが演じている。