【映画】ピザ!

 インド映画『ピザ!』を観る。
 スラム街に住む幼い兄弟、ある日、近所にピザの専門店がオープンしたため、彼らは世の中に「ピザ」という食べものが存在するということを知ってしまう。いったい、どういう味の食べものなのだろう。彼らは、なんとしてでも食べてみたいという欲求に取り憑かれてしまう。
 しかし、彼らの生活水準では、ピザは高すぎてとても手が出ない。ふだん、輸送途中に貨物列車から落ちた石炭を拾い集めては家計の足しにしていたのだけれど、あれやこれや知恵を絞って小銭を貯めはじめる。そして、ようやく貯めたお金をもって店に行くのだけれど、薄汚いスラムの子どもは店に入れてもらうことができないのだった。それでも諦めきれないふたりは、今度は新しい服を手に入れるためのお金を貯めようと頑張るのだけれど……。
 派手さのない小品なれど、しみじみとしたいい映画だった。なにより、主役を演じたふたりの子どもの自然体の演技がいい。彼らは俳優ではなく、実際にスラムに住んでいる子どもたちから選ばれたとのこと。演技経験がまったくなくても、あの自然な演技ができてしまうのだから、子どもってすごい。
 ちなみに、ふたりがお金を稼ぐために、道路で車に乗っている人たちに飼っていた犬を売ろうとする場面があるのだけれど、あの場面はスタッフが「お金がなくなってきて撮影が続けられない」と嘘をついて、子どもたちが自発的に仔犬を売ろうとしたのだとか。
 ピザを食べたいというふたりの行動が、やがてとんでもない騒動に繋がっていき、欲にまみれた大人たちが右往左往することになるのだけれど、ふたりがピザを食べることができたかどうかは、実際にこの映画をご覧になっていただきたい。アマゾンプライムビデオで配信中。上映時間は90分と、インド映画としては例外的に短いので観やすいかと思います。