【映画】ワンダー・ガールズ 東方三侠

 ジョニー・トー監督の『ワンダー・ガールズ 東方三侠』を観る。ジョニー・トー監督の作風が変わって現在のようになったのは1998年の『ヒーロー・ネバー・ダイ』、1999年の『ザ・ミッション 非情の掟』あたりからなので、1993年に撮られた本作などは、現在のジョニー・トー監督の作品しか知らない人には信じられない作品なのではないだろうか。実はジョニー・トー監督、こういう娯楽に特化した作品を数多く撮っていた監督なのだ。
 この頃のジョニー・トー監督の最大の特色は、どんな手段をとってでも観客の感情をゆさぶろうとする映像を撮るというところで、本作でもやたらと風が吹いて書類が舞ったり、枯れ葉が舞ったり、ミシェル・ヨーの髪の毛がなびいたり、とにかく無駄にエモーショナルな映像が多い。そもそも、風の吹くはずのない研究室の中で、なぜか風が吹いて書類が舞い踊ったりしているのである。実にあざとい。そのうえ、なんの臆面もなく『大陸横断超特急』やら『ターミネーター』のシーンをぱくったりもする。なんとも貪欲な香港映画なのだ。『ターミネーター』のネタからの二人羽織なんて展開は、普通ややらないぞ。
 そして本作は、ジョニー・トー、ワイヤーワークの鬼の異名を持つチン・シウトンとタッグを組み、しかも主演がアニタ・ムイミシェル・ヨーマギー・チャンの3人という、ほぼほぼ無敵の布陣なのである。ちなみに今ではアカデミー俳優となったミシャル・ヨーだが、当時はミシェール・キングという表記が主に使われていて、英語版の予告編ではミシェル・カーンとなっていたりする。
 そして、彼女らを迎え撃つのは不死身のアンソニー・ウォン! これがまた適役としか言いようがない。さらに3人の前に立ちふさがる魔王を演じているのは、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地黎明』でウォン・フェイホンと死闘を繰り広げるヤン・サイクンではありませんか。
 アニタ・ムイが歌う主題歌がこれまた実にいいのだけれど、これを作曲したのは羅大佑。ちなみに、台湾バージョンでは娃娃が主題歌を歌っていて、これまた実にいい。この曲を聴くだけで胸が躍る。
 というわけで、なんと30年ぶりにこの作品を観てみたのだけれど、やっぱりサイコーにかっこよくって、サイコーに面白い映画なのでした。