【読書】松永努『マニラ不思議物語』論創社

 松永努『マニラ不思議物語』論創社を読了。
 時事通信社のマニラ特派員として、1990年から1994年までのフィリピン生活で出会った、日本ではありえないフィリピンならではの奇妙な出来事のあれこれを紹介した1冊。少しでもフィリピンを知っている人なら「さもありなん」と笑ってしまうけれど、まったくフィリピンを知らない人にしてみれば「本当かよ?!」と思うようなエピソードがたっぷりと並んでいる。
 「人間の母親が魚を産んだ!」というニュースが世間を騒がせたことがあった。テレビに出た医師が「科学的にみて、そんなことはあり得ない」と断言すると、「ありえないことが起きた!」と大興奮するのがフィリピン人。著者は、数日で亡くなってしまったその赤ちゃん(?)を観に行くのだが、ガラス瓶に入れられたその赤ちゃんは魚以外のなにものでもなかったという。そりゃ、そうだ。
 モンテンルパ刑務所の看守が、服役囚をマニラ市に連れ出して強盗をやらせたという事件があった。呆れた話だけれど、実際に政治家が政敵を暗殺する際に、服役囚を殺し屋として雇うということもあるのだという。なにしろ服役中という鉄壁のアリバイがあるので、有罪になることなどありえないのだ。『牢獄処刑人』という映画があったが、あれは本当に実話をベースにしていた映画だったのだ。
 フィリピンでは密造銃が一大産業となっているのだけれど、密造銃を持ったゲリラが投降すると7000ペソの報奨金がもらえるのだという。そこで、投降することにしたゲリラは、あらかじめ4500ペソで買った銃を持って投降するのだとか。
 2人の日本人が殺害される事件が大きく報道されたことがあった。そうなると、実行犯は自慢したくてしたくてたまらなくなり、我慢できずに知人に「誰にも言うなよ。実はあの事件の犯人はオレなんだ」と喋ってしまう。そうすると、聞いた人間も黙っていられなくなり、「実はあの事件の犯人はオレなんだ」と、話を作って人に話してしまう。人から人へとその話が広がっていき、とうとう実行犯が逮捕されてしまったのだという。
 こういう、まるで笑い話のような話が、フィリピンにはごろごろしている。なんとも愛すべき国民性というか、なんというか。