Netflixでフィリピン映画『ロロ・アンド・ザ・キッド』を観る。
原題「Lolo and the Kid」。
監督:ベネディクト・ミケ、主演:ジョエル・トーレ、ユーワン・ミカエル。
路上生活者のロロ(タガログ語でじいちゃんのこと)と少年キッド。ふたりは、人の優しさにつけこんで詐欺を繰り返し、逞しく生きてきたのだが……。
脚本はみごとなまでにこの手の作品のパターン通りで、ひねった設定とか、新しいアイデアとか、そういったプラスアルファの要素はまったくない。ここまでシンプルだと、ストーリー紹介であれこれ書くことすらもない。実にもって潔い作品なのだ。「潔い作品」と書いていて、自分でも褒めているのかいないのか、いまいちはっきりしないのだけれど。
しかし、それでいてついつい観てしまい、最後にはガッツリ泣かされてしまうのは、名優ジョエル・トーレ(Joel Torre)と子役の演技が素晴らしいからだ。ジョエル・トーレのなんともいえない慈愛に満ちた表情の素晴らしいことよ。そのジョエル・トーレを「じいちゃん、じいちゃん」と呼んで慕う少年とくれば、そりゃ、泣かされますって。
キッドを演じているユーワン・ミカエル(Euwenn Mikaell)は、2013年生まれで、なんと4才の時から子役としてテレビドラマに出演しており、2023年のメトロマニラ・フィルム・フェスティバルで上映された『Firefly』では主役を演じていたりもする。おそらく、名子役として知られた存在なのだろう。
一方のジョエル・トーレはというと、『牢獄処刑人』の暗殺者から、『ブローカーたち(The Brokers)』の悪徳政治家から、『Miracle in Cell No. 7』の人のいい牢名主役から、『BARUMBADINGS』のゲイのファッション界のカリスマ役まで、とにかく幅広くなんでもこなすフィリピン映画界の名優のひとり。本作における微妙な表情の絶妙なことよ。
そして、ふたりに騙される人のいい金持ち役で、イーザ・カルザド(Iza Calzado)、ジョエム・バスコン(Joem Bascon)、シャイナ・マクダヤオ(Shaina Magdayao)なども出演している。
監督のベネディクト・ミケ(Benedict Mique)は脚本家出身で、テレビシリーズや映画の監督としても活躍している人のようだけれど、作品を観たのは今回が初めて。