【映画】サラール

 インド映画『サラール』を観る。主演は『バーフバリ』のプラバース、監督は『K.G.Fシリーズ』二部作のプラシャーント・ニール。そのふたりがタッグを組んだ結果、実に異様な迫力の映画が誕生した。
 アメリカ合衆国で活動する実業家クリシュナカントの娘アディヤは、父親から禁止されていたにもかかわらず母親の遺骨をガンジス川に散骨するためにインドへとやってくるのだが、入国と同時に何者かに付け狙われることになる。それを救うために名指しされたのが地方の炭鉱町で母とふたりで秘かに暮らすデーヴァ(プラバース)だった。母から一切の暴力を禁止されていたデーヴァだったが、アディヤが攫われそうになったとき、母が禁令を解き、圧倒的な力で誘拐犯たちを叩きのめしていく。はたして、アディヤを狙うのは何者で、何が目的なのか? そして、その犯人組織とデーヴァとの過去の因縁とは何なのか? クリシュナカントに依頼されてアディアに同行したビラールは、盗賊をなりわいとする3部族によって作られた都市カンサールでかつてあったデーヴァにまつわる過去を語り始める。
 犯罪によってなりたつ都市カンサール。その圧倒的な力からインド政府に自治権を認めさせ、さらにはインドの地図からも抹消させ、その存在を秘匿していた。だが、カンサールの存在は噂として広まっており、その紋章を見ただけで軍部さえもが震え上がった。
 そのカンサールで、権力争いが発生する。元首の地位を求める大領主たちは、海外から傭兵部隊を呼び寄せ、いままさに火蓋をきらんとする争いに備えていた。だがしかし、元首ラージャ・マンナルの息子ヴァラダだけは軍隊を呼び寄せることなく、幼なじみのただひとりの男、デーヴァを招聘するのだった。
 かくして物語はその過去の血にまみれた権力闘争を描いていくのだが、デーヴァに関するとんでもない背景が明らかになったところでパート1が終了。おおっ、なんとこの175分もある『サラール』という映画は、さらに続く大長編映画の第一部に過ぎなかったのだ。
 主人公の強さは半端なさすぎで、『バーフバリ』『RRR』の主人公たちをも楽々と凌駕する。腕を一閃するだけで、襲いかかる男たちの4~5人はあっさりと吹き飛ばされる。このあたりの描写の力強さは、さすがはインド映画という感じだ。しかも、その闘いのシーンの血なまぐさいこと。このあたりのねちっこい描写は、なるほど『K.G.Fシリーズ』の監督である。
 暴力に満ちた異様な迫力の映像が続き、とにかく圧倒されるのだけれど、単に暴力沙汰を描くだけではなく、その演出にもいろいろ凝っていて惹きつけられる。いやあ、凄い。
 なぜアディヤが狙われるのか? なぜデーヴァと母はその存在を知られぬように隠れて暮らすようになったのか? なぜ無二の親友であったデーヴァとヴァラダが対立するようになったのか? いくつもの謎はまだ明かされぬまま、第二部に持ち越されている。公式ホームページでは「第2弾も制作中」とあるだけで、第二部の公開がいつになるのかはっきりしないのだけれど、あまり間が空くと内容を忘れてしまうので、早くしてほしいものだ。