【映画】ポライト・ソサエティ

 イギリス映画『ポライト・ソサエティ』を観る。
 イギリス映画だけれど、見た目はインド映画で、魂はクンフー映画という、なんとも不思議な映画。
 ロンドンで暮らすパキスタン系イギリス人の女子高校生リア(プリヤ・カンサラ)の夢はスタントウーマンになること。彼女の唯一の理解者は芸術家を志す姉のリーナ(リトゥ・アリヤ)で、彼女にスタントの動画を撮ってもらっては、憧れのスタントウーマンに動画を送ったりしていた。ところが、おのれの才能のなさに見切りをつけて芸術家の道を諦めたリーナの前に、大金持ちでハンサムな男が現れる。あっという間に結婚の約束に漕ぎつける二人だったが、リアは二人の仲を絶対に認めようとはせず、なんとしてでも二人を別れさせようと、友人に手伝ってもらいながらあの手この手で邪魔をする。その邪魔はことごとく失敗し、行きすぎた過激な行動のために母からも謹慎を言い渡されるリアだったが、とうとう結婚の裏にとんでもない陰謀が隠されていたことを探り出してしまうのだった!
 映画の体裁は見事なまでのインド映画である。ここぞという場面ではいかにもインド映画といった歌が流れ(なんとも懐かしいインド映画のテイストを感じさせる音楽と思ったら、昔のインド映画で実際に使われていた音楽なのですね)、結婚式の場面ではしっかり歌い踊るシーンも挿入される(ここで使われているのはシャー・ルク・カーン主演の『デーウダース』という映画の中の曲だそうです)。それでいて、女同士のクンフーバトルもたっぷりと盛り込まれている。かと思っていると、唐突に浅川マキの「ちっちゃな時から」が流れたりして、なんとも不思議なハイブリッド映画なのだ。
 そして、リナを手助けする高校の友人たちとのやりとりが実に楽しい。彼女たちのやりとりに、何度も声をあげて笑ってしまった。
 脚本・監督は、シンガポール生まれのパキスタン系イギリス人の女性、ニダ・マンズール。1990年生まれということなので、まだかなり若い。コミカルなシーンを描くセンスが実に素晴らしい。本作が長編映画デビュー作とのことだが、それ以前に「絶叫パンクスレディパーツ!」という青春音楽コメディを撮っていて、非常に高く評価されているとのこと(アマゾンプライムビデオでの配信あり)。これからも、こういった楽しい映画を撮ってほしいと、思わず期待してしまう監督なのでした。