【読書】原田ひ香『古本食堂』ハルキ文庫

 原田ひ香『古本食堂』ハルキ文庫を読了。
 神保町で古本屋を営む兄が亡くなり、その整理のために北海道から上京してきた鷹島珊瑚は、兄が大切にしていた本を処分することができず、店を引き継いで、店で本を売ることで兄の蔵書を処分していこうとする。だが、自宅にある蔵書の量は半端なく、まったく減っていく気配を見せない。
 一方、珊瑚の親戚で国文科の大学院生の美希喜は、以前から大叔父の古本屋に顔を出していたのだが、店を引き継いだ珊瑚のところにも顔を出し、店を手伝うことになる。
 その古本屋を舞台とした連作短編集で、珊瑚と美希喜の一人称形式の物語が交互に語られていく。絶版本と、神保町で味わえるさまざまな料理が、店に出入りする人たちの物語に絶妙に絡んでいくという作品で、よくまあこういう組み合わせの連作短編集という設定を思いついたものだと感心してしまう。そして、その難しい設定でありながら、よくまあこれだけみごとな物語として形にしたものだなあと、これまたしみじみ感心してしまう。
 実に面白いし、とても気持ちのいい小説だ。まだ単行本にはまとまっていないが、続篇も書かれているようなので、それも楽しみだ。