【映画】ハイソな令嬢になるルール

 フィリピン映画『ハイソな令嬢になるルール(The Entitled)』を観る。
 下品でガサツでマナーとか常識のたぐいをまったくわきまえないベリンダ(アレックス・ゴンザガ/Alex Gonzaga)。実は、彼女は超リッチなホテル王の娘だった。だが、どういう事情があってのことなのかはわからないが、彼女は自分の素性を知らずに海辺の小さな村にあるどん底の環境で育ったのだった。
 ずっと探していた娘をようやく見つけ出した父親は、彼女を呼び寄せて一緒に暮らすことになる。だけど、その暮らしはいままでのものとはあまりにも違いすぎていた。父は、いずれベリンダが自分の事業を手伝えるようにと、彼女の教育を弁護士のジェイコブ(JC・デ・ベラ/JC De Vera)に任せるのだが、それはあまりにも困難な道のりであった!
 コメディとはいえ、ベリンダのキャラクターがあまりにも下品すぎて、まったく笑えない。まわりの人間の気持ちをおもんばかるということがまったくできないというのも、なんとも不愉快。このヒロイン、まるっきり共感できないキャラクターなのだ。美人女優がひたすら下品な行動、言動を繰り返せば観客が大喜びするとでも思ったのかも知れないが、さすがにこれはやりすぎ。
 義理の妹によるいやがらせでベロンベロンに酔っぱらって、父親に大恥をかかせてしまったことで、ようやくマナーをわきまえるべく努力を始めるのだけれど、そこにいたるまでがあまりにもひどすぎたので、まるで別人になってしまう。ちょっと努力したぐらいで、これができるようなキャラクターじゃないと思うぞ。
 そして、この最低最悪のヒロインに、どういうわけかイケメン弁護士のジェイコブが惚れてしまうのだけれど、そこに説得力がないのもつらいところ。ガサツなキャラだけれど、実はけっこういいところもあるというあたりをもっとうまく見せてくれないと、ちょっと厳しい。
 まあ、本人が努力を始めたあたりからは、いつもの家族愛をめぐる感動的な物語になっていくのだけれどね。
 ちなみに、本作でいちばん存在感を発揮しているのは、ベリンダと仲良くなる家政婦を演じているメライ・カンチヴェロス(Melai Cantiveros)だろう。他の映画でも、なかなかいい脇役を演じていたが、彼女のような存在がいるだけでコメディ映画に心地よいテンポが生まれてくる。
 本作は、主演女優であるアレックス・ゴンザガが脚本執筆に参加し、実姉のトニ・ゴンザガと義理の兄のポール・ソリアノが製作に名を連ねている。ということは、2021年のコメディ・ホラー『The Exorsis』、2020年のロマンティックコメディ『霊媒は恋の始まり(love the way U lie)』と同じパターンで作られた映画ということになる。どうもこの姉夫婦が製作を担当して、自分で脚本を書いたアレックス・ゴンザガ主演のコメディ映画というのは、いまいち面白くならないということがはっきりしてしまったような気がする。
 未見だけれど、アレックス・ゴンザガ、トニ・ゴンザガの姉妹が主演して、アレックス・ゴンザガ、トニ・ゴンザガ、ポール・ソリアノが製作に名を連ねているコメディ映画『Mary, Marry Me』は、多少は評判がいいようなのだけれど、実際のところはどうなんだろう? アレックス・ゴンザガが脚本に手を出していないから、大丈夫なのかな。
 監督はライザ・ソベラノ&エンリケヒル主演の『Just the Way You Are』、ジョシュア・ガルシア&ジュリア・バレット主演の『Vince & Kath & James』、サラ・ヘロニモ&ジョン・ロイド・クルーズ主演の『やっと見つけた本当の恋(Finally Found Someone)』などのテオドール・ボボロル(Theodore Boborol)。そんなヘタな監督じゃないんだけどなあ。