【映画】危険なUターン

 

インド映画『危険なUターン』を観る。
 新聞記者見習のラチャナは、高架道路の中央分離帯として設置されたブロックを動かして違法なUターンをする人間の取材を始めていた。だが、取材対象としていた人物が謎の死を遂げたことで、容疑者として逮捕されてしまう。しかし、その結果わかったのは、彼女が取材しようとしていた人物は、ことごとく自殺を遂げていたのだった。なぜか、特定の場所で違法なUターンをしていた人間は、皆、その日のうちに自殺していたのだ。そのことを知った刑事のナーヤクとともに謎を解こうとするラチャナだったが、謎は深まるばかり。ラチャナは、真相を探るために、とうとう自分でブロックを動かしてUターンするのだが……。
 いやいや、これはなかなかの拾いものだった。Uターンすると自殺してしまうという謎の設定が魅力的で、どうしても解けないその謎を解くためにヒロイン自らがUターンをするという場面のゾクゾク感! そして、そのあとの真相の切なさ。が、そこからさらに驚愕の展開があり、それがさらにひっくり返るという脚本のみごとさ。
 本作はカンナダ語で作られているのだけれど、カンナダ語映画としては大きな成功を収め、インドではヒンディ語マラヤーラム語テルグ語タミル語ベンガル語、外国ではスリランカ、フィリピンでリメイク版が作られているとのこと。自分はそのうちのフィリピン版を先に観ているのだけれど、フィリピン版よりもはるかにデキがいい。フィリピン版とカンナダ語版では、亡霊の扱いがまったく違っていて、カンナダ語版の方がはるかに切ない。フィリピン版の亡霊はいささか即物的で、あまり怖くないのだ。それに、家族を題材にして観客を泣かせるというのはフィリピン映画の十八番のはずなのに、その点でもカンナダ語版に軍配があがってしまう。
 ちなみに、インド映画は歌って踊ると思っている人も多いかもしれないけれど、本作は歌わないし踊らない。けっこう普通のサスペンス映画として作られているのだ。それにしても、あのさりげないシーンには、ゾクッとさせられたなあ。いや、あれは怖い。
 ちなみに、冒頭に実話をベースにしているとクレジットが入っているのだけれど、実際にあった事故がアイデアベースとなっているのだろう。