【映画】喜劇 誘惑旅行

 フランキー堺主演の『喜劇 誘惑旅行』を観る。
 なにゆえこんな映画を観たかというと、舞台がフィリピンだから。1972年の日本映画でフィリピンがどのように描かれているのか、ちょっと気になるではありませんか。
 大沢泰三(フランキー堺)と弘子(倍賞千恵子)の夫婦はクイズ番組に出場して、みごとフィリピン旅行をゲットする。だが、ドルショックのために招待されるのはひとりだけと言われ、しょぼんとする泰三だった。ところが、弘子が羽田-マニラ線の開設10万人目の客となったために、夫婦でフィリピン旅行に招待されることになる。かくして、夫婦揃ってフィリピンに行けることになったのはいいのだけれど、クイズ番組のスポンサー企業と、フィリピン航空の両方から招待されることになったものだから、フィリピン滞在中の接待が夫婦別々になったりしてしまう。さらには機内で出会ったデザイナーの卵の清美(尾崎奈々)に泰三がフラフラッとよろめいてしまったり、弘子は弘子で泰三そっくりの大富豪アポカバーナ(フランキー堺)に情熱的にくどかれてまんざらでもない気持ちになってしまったりして、事態はどんどん混乱していってしまうのだった。
 正直、ストーリーはとってつけたようなもので、基本は観光ガイド的な映画となっている。マニラの主だった観光地をまわり、足を伸ばしてタール湖も紹介され、さらには船と飛行機でセブ島観光もおこない、最後にはミンダナオ島にまで辿り着く。移動距離を考えると、なかなか大変な観光旅行だ。クレジットを見ると、「協力:フィリピン航空、阪急交通社フィルパック、マニラヒルトン」とあるので、いかにもフィリピン旅行を行きたくなるような映画にしてほしいというリクエストがあったりもするのだろう。
 もちろん、そういう性格の映画であるからして、あまりフィリピンをマイナスに描くようなシーンはないのだけれど、やはり男性が女遊びをする国みたいなニュアンスの描写はそこここにあった。ジャルパック全盛時代だろうから、実態としてそういうこともあったのだろう。
 意外だったのは、日本人の俳優がけっこうちゃんとタガログ語を使っていることで、場面によってはタガログ語と日本語のちゃんぽんのギャグを飛ばしたりもしている。よくまあ、タガログ語のダジャレなんてのを脚本に盛り込めたもんだ。
 冒頭のクイズ番組では森次晃嗣が司会者として登場し、自宅では森田健作倍賞千恵子の弟として登場してくる。当然ながら皆さん、実にお若い。ワンシーンだけ、ホテルスタッフのフィリピン人として左とん平が登場してくるのだけれど、これがなかなか面白かった。いやあ、芸達者だなあ。