【読書】冲方丁『骨灰』角川書店

 冲方丁『骨灰』角川書店を読了。
 大手デベロッパーのIR部(投資家向け広報部)危機管理チームに所属する松永光弘は、高層ビルの地下建設現場での事故を示唆するツイートの調査のために、地下深くへと降りていき、そこで異様な光景に遭遇する。異常な乾燥と、異様な臭気に包まれた地下深くに謎の祭祀場があり、そのすぐ傍らの図面に記されていない巨大な穴の底に、男が鎖で繋がれていたのだ。パニックに襲われながらもその男を解放した時から、光弘に不思議な現象が襲いかかる。異常な乾燥と、人骨を焼いたような臭いと、白い灰がつきまとうようになるのだ。それは光弘の家の中にも入り込み、家族をも巻きこんでいくこととなる。
 いやあ、これは怖い。異様な喉の渇きに襲われ、いつの間にか床や家具の上に白い灰がうっすらと積もり、そして異臭がつきまとうという、その冒頭だけでも十分に怖いのに、そこからどんどん主人公がおかしくなっていくのだ。理不尽な祟りが容赦なく一家に襲いかかっていくのだ。
 江戸・東京では250年間で大火災が100回以上起きている。そのため東京の土には、骨まで焼かれた何十万人、何百万人もの骸が混じっており、その怨念が数百年かけて積み重なっているのだという。東京という大都市は、その上にビルを建てて暮らしているのである。そりゃ、何もないという方がおかしい。そして、その地下深くの怨念を鎮めることを生業とする一族が昔からいて、高層ビルなどの地下深くに設置された祭祀場のメンテナンスをおこなっているのだが……。
 いやあ、最近読んだホラー小説の中ではいちばん怖かったかな。