【映画】売られた女 セックスの代償

 フィリピン映画『売られた女 セックスの代償(TAHAN)』を観る。

 11才のときに母親(ジャクリーン・ホセ/Jaclyn Jose)に売り飛ばされて客をとることを強要され、売春婦として生きてきたエリサ(クロエ・バレット/Cloe Barreto)。だが、いくら稼いでも、その売り上げは母親がギャンブルにつぎ込み、あっというまに消え失せていった。エリサはそのストレスから友人のミシェル(クィン・カリーリョ/Quinn Carrillo)たちと酒を飲み、コカインを吸引し、そして男を買う日々を過ごしていた。
 ある時、エリサはずっと忘れられないでいたかつてのボーイフレンドのマーカス(JC・サントス/JC Santos)と再会する。マーカスはまたつきあおうと言ってくれたのだけれど、自分がやっていることがばれることを恐れて、エリサはマーカスに近づくことすらできないでいた。
 そんなある日、騙して大金を巻き上げていた男に嘘がばれ、エリサは暴行を受ける。それを救ったのが母親だった。なんと、包丁で男を滅多刺しにして殺害してしまったのだ。そして、それが引き金となったかのように、殺人をかぎつけた男、エリサが連れ込んだ男を、母親は次々と刃物で殺害していく。そして、その狂暴な怒りはマーカスとともに逃げだそうとするエリサにも向かうのだが……。

 映画はエリサと中年女性とのレズビアンのシーンから始まる。そこからはひたすら、彼女を買う男とのセックス、ゆきずりの男とのセックス、彼女が買った男とのセックスと、矢継ぎ早にセックスの場面が繰り返される。正直、この時点で辟易してしまい、観るのをやめようかとすら思った。
 しかし、監督のボビー・ボニファシオ・ジュニア(Bobby Bonifacio Jr.)は、『Hellcome Home』というたくらみに満ち満ちたホラー映画を撮った監督である。しかも、『ローサは密告された』『ハウスメイド 欲望のしもべ』のジャクリーン・ホセ、『アルター・ミー:心に耳を傾けて』『Miracle in Cell No. 7』『モーテル・アカシア』のJC・サントスといったトップクラスの俳優が出ているのである。このまま、単なるポルノで終わるわけがあるまい。
 そう思って我慢して観ていると、唐突に血まみれのスプラッター映画となって驚愕する。えっ、なにこの展開!? 包丁を持って男をグッサグッサと血祭りにあげていくジャクリーン・ホセの姿はまるで『ミザリー』のキャシー・ベイツだし、血まみれになって呆然としているクロエ・バレットの姿は『キャリー』のシシー・スペイセクではないか。
 しかし、それに驚いていると、さらにさらにとんでもない驚愕の展開が待ち構えているのだ。えっ! えっ! これって、こういう映画だったの! びっくりしすぎて言葉も出ない。こ、これは『シックス・センス』! いや、これ以上書いてはネタバレになってしまう。いや、すでにネタバレか? でも、それぐらい書いておかないと、たいていの人は前半のセックスシーンの連続にうんざりして観るのをやめてしまうよね。
 いやあ、さすがはボビー・ボニファシオ・ジュニア監督。久しぶりにフィリピンの有料配信サイトの会員になって、監督の作品を追いかけてみようかという気にさせられたぞ。