【読書】川内康範『銀座旋風児』穂高書房

 川内康範『銀座旋風児』穂高書房を読了。
 終戦のどさくさの中で、軍の所有する数千万円に値する貴金属を大陸から持ち逃げした特務機関の4人の男たちがいた。そのことを知った銀座旋風児の呼び名を持つ二階堂卓也は、犠牲者となった男の娘とともに4人組の行方をさぐり、国の財産をとりもどすべく行動を開始する。
 これが前半で、この事件を解決した卓也は風の如くいずこかへ旅に出てしまう。
 そしてその1年後、片面だけ刷られた新しい五千円札とともに行方をくらました印刷工をめぐる事件に卓也は巻き込まれ、ふたたび銀座へと帰ってくる。
 前半が小林旭主演の映画『銀座旋風児』の原作で、後半が『銀座旋風児 黒幕は誰だ』の原作ということらしい。
 非常に個性的なリズミカルな文章で、快男児の活躍を描く物語。なるほど小林旭が主演するにふさわしい物語という印象を受ける。おそらくは、小林旭主演を念頭に置いて書かれた小説なのではないだろうか。
 若い女性がチンピラに絡まれている場面の描写がこれ。

「止したらどうだ、小僧」
「何ッ?」
「止したらどうだ小僧と云ったんだ」
 ニヤリ、旋風児の卓也は微笑した。

 おおっ、かっこいい! まさに小林旭
 会話を多く取り入れ、短い文章を積み重ねてリズムをとり、時には体言止めを使い、非常に読みやすい。そして、ところどころに妙におしゃれな表現が挟み込まれたりもする。なかなか面白い書き手であるのだ。
 そして、異なるタイプの美女が卓也を追いかけ、個性豊かな男どもも卓也に惚れ込んで仕事を手伝うようになる。女からも男からも惚れられる銀座旋風児なのだった。