★今夜は踊ろう


 田宮二郎荒木一郎主演の映画『今夜は踊ろう』を観る。
 バー「パル」のマスターの隆二(田宮二郎)は、銀座のバーのママ笛子から「知り合いのバーのママが桜田というパトロンに裏切られて店を奪われたのをなんとかしてほしい」と頼みこまれ、一肌脱ぐために乗り出すことに。しかし、相手もなかなか一筋縄ではいかない男で、簡単にはおさまりそうにない。ところが、たまたま隆二に惚れ込んで店に遊びに来ていたみどりという娘が、桜田の亡くなった二号の娘であったことから、娘を人質に店の権利書を取り戻そうと企む。
 一方、隆二の大学の後輩で貧乏学生の利男(荒木一郎)が、「パル」で働かせてほしいと頼み込んでくる。なんとも頼りにならない若者だが、憎めない性格の利男を雇った隆二は、みどりの世話を利男に任せることに。
 かくして、店の権利書をめぐる荒っぽいかけひきが始まる一方で、隆二に惚れていたはずのみどりもいつしか利男のギターと歌に魅せられていくのだった……。

 1967年の作品で、監督は弓削太郎、脚本は笠原良三
 実は、自分は荒木一郎についてはほとんど知らなかった。シンガーソングライターとしてヒット曲を連発していたとか、そういう知識すらなかった。本作も、荒木一郎のヒット曲「今夜は踊ろう」を映画化したものとのこと。本作を観るかぎりでは、なんとも頼りなさそうで、ボンヤリした若者にしか見えないのだけれど。
 そして、この映画には彼の歌うシーンがたっぷりと入っていて、さながら歌謡映画の如し。なんの必然性もなくまるまる1曲歌う場面が挟み込まれていたりして、当時はよほど人気があったのだろう。
 しかし、主役は田宮二郎の方なのである。チンピラ相手の乱闘シーンなどもあり、活劇シーンはすべて田宮二郎が受け持っている。田宮二郎は、当時の大映の看板俳優だったとのこと。自分の世代だと「クイズ・タイムショック」の司会でしかなかったのだけれど。
 ちなみに、なんでこんな映画を観たかというと、若き日の内藤陳さんがトリオ・ザ・パンチとして出ているからなのでした。だけど、もう少し登場シーンがあるのかと思っていたら、みごとにワンシーンだけの出演。チンピラ役で、あっという間に田宮二郎にやられて逃走してしまうだけ。うーん、残念。