★高野和明『踏切の幽霊』文藝春秋

 高野和明『踏切の幽霊』文藝春秋を読了。


 新聞記者出身で、いまは女性雑誌の記者をしている松田は、心霊特集を担当させられることになる。そこで渡されたのが、読者から寄せられた1枚の心霊写真だった。下北沢三号踏切で撮られたその写真には、腰から下のない女性の姿が写っていた。さっそく取材に乗り出すと、その踏切の近くで1人の女性が殺害されている事件が浮かび上がってくる。だが、その女性の身元は不明のまま。いくつかのキャバクラを転々とし、売春もしていたらしいことも判明するのだが、分かるのはそこまで。松田がかつてのツテを頼りに取材を進めていくと、やがてあまりにも哀しい事実が明らかになっていくのだが……。
 いわゆるホラー小説として読み始めたのだが、新聞記者出身の主人公が事件の背景を探っていく過程はいわゆる社会派ミステリーのものであって、ここががっつり読ませるのはさすがは高野和明。浮かび上がってくる真相も社会派ミステリーを思わせるものなのだけれど、そこに幽霊譚を絡ませ、しかもガッツリ泣かせてくるというハイブリッド小説なのだ。いや、ほんと、あまりの哀切さに泣かされてしまった。ホラー小説で直木賞候補?と思っていたのだけれど、なるほど、納得です。