★ジャック・ケッチャム『隣の家の少女』扶桑社ミステリー

 ジャック・ケッチャム隣の家の少女扶桑社ミステリーを読了


 主人公は12才の少年デイヴィッド。森の奥の袋小路のつきあたりにある自然ゆたかな村に暮らしていた。その隣の家に、メグという美少女が越してきたところから物語は始まる。交通事故で両親を亡くし、大怪我をした妹とともに遠縁の家に引き取られてきたのだ。
 隣りに家に暮らしていたのは、デイヴィッドの親友のドニー、その弟のウーファー、そして人当たりのいい母親のルースだった。だが、メグを引き取ったあたりから、次第にルースの様子がおかしくなっていく。どんどん壊れていってしまうのだ。
 いやはや、なんと邪悪で陰惨な小説であることか。それでいて、ページをめくる手を止められなくなってしまう麻薬のような小説なのだ。読みながら、何度も何度も「勘弁してよ」と思ってしまう。読みながら思っていたことは、さっさと読み終えてこの悲惨な物語とおさらばしたいということばかり。それなのに、読むのをやめることができないのだ。
 そして、この陰惨きわまりない小説に魅了されている自分に気が付いて、たまらない気持ちにさせられてしまう。自分の中には、このグロテスクな物語を楽しんでしまう性癖が隠されていたのか。そうした自分の中の暗黒面を容赦なくえぐり出してしまう邪悪な小説なのだ。そうした自分の中のダークサイドと向き合うことを強要される、実に恐ろしい小説なのだ。

「これにかんしては語りたくない。ごめんこうむる」
 このフレーズのなんと怖いことか。