★デイヴィッド・マレル『廃墟ホテル』ランダムハウス講談社

 デイヴィッド・マレル『廃墟ホテル』ランダムハウス講談社を読了


 寂れたリゾート地に残された廃墟となった巨大なピラミッド型のホテル。建てたのは若くして莫大な遺産を相続したものの、広場恐怖症のためにそのホテルにこもって一生を過ごした富豪。そのホテルに、廃墟を探検することを趣味とする一団が潜入するのだが、そこで予想だにしなかった恐怖の夜を体験することになるのだった……。
 この設定を知った瞬間、「これはマシスンの『ヘルハウス』じゃん」と思ってしまった。そして、本を開くとそこにジャック・フィニイリチャード・マシスンへの献辞があり、「やっぱり『ヘルハウス』か!」という思いを強くしてしまう。
 が、この予想は大きくはずれていた。いわゆる超常現象を扱ったホラー小説ではなかったのだ。しかし、それ以上はネタバレになりそうで内容の紹介ができない。とにかく、思ってもみなかった展開となる小説なのだ。ある場面では「えっ、えっ、なんでそんなところに人間が!」って、とてつもなくビックリする。
 デイヴィッド・マレルというと『ランボー』の原作者として知られている小説家だけれど、僕が実際に読んだことがあるのはおそらくモダンホラーセレクションの1冊として刊行された『トーテム』ぐらいだろうと思う。そのため、なんとなくホラー小説の書き手というイメージもあるのだけれど、解説などを読むと無性に『蛍』を読んでみたくなってしまった。