【映画】カンフー・タイガー 広東の虎

 中国の武術映画『カンフー・タイガー 広東の虎』を観る。
 清朝末の混乱期、広州の武道家たちは治安を守るために武学会を結成していた。ところが、アヘン密売に手を出す者が現れ、それをきっかけに武学会内部にアヘン密売に関わる裏切り者がいることが発覚する。武学会の陳会長は、弟子の鉄橋三に調査を命じるのだが……。
 というわけで、かつて実在したと伝えられる伝説の武術家、広東十虎のひとりに数えられる鉄橋三を主人公としたクンフーアクション映画である。広東十虎には、黄飛鴻の父親の黄麒英、チャウ・シンチーが演じたこともある蘇乞兒などがいるが、鉄橋三は鉄線拳の名手として知られたとのこと。そこでふと気になって調べたら、以前観た『少林寺 無敵の鉄線拳(鉄線功夫拳)』の主人公の梁坤て、鉄橋三だったのですね。知らなかった。
 で、その鉄橋三を主人公にした本作だけれど、オープニングになかなか派手なバトルシーンがあって「これは期待できるかも」と思わせるものの、あとは武学会をのっとろうとする兄弟弟子の悪事がひたすら続き、鉄橋三は繰り返し罪を着せられてしまう。なかなか怒りを爆発させて敵を撃つという展開にならない。その間に、師匠は罠にかかって命を落とし、他の門派の頭目は毒を飲まされて死んだり半身不随になったりという、ドロドロの展開が繰り広げられる。
 我慢に我慢をかさねて最後に主人公が怒りを爆発させるというのは、この手の映画のお約束の展開なんだけれど、もっと早く悪事をくい止めろよと、イライラしてしまった。
 全体的にかっちり作っておりますという感じは伝わってくるのだけれど、いまいち華がないというか、工夫が感じられないというか、魅力のない映画となっていた。
 主役を演じている孙浩然という人は、どうやらこの鉄橋三を何度も演じているらしい。きっと、他の作品も似たようなものなのだろう。
 ヒロインを演じているのは薛小冉という人らしいのだけれど、画像を検索するとそこそこ可愛らしい写真が並んでいるのに、なぜか本作では可愛らしさのかけらもない。どういうわけか、まったく魅力の感じられないおばさん顔のメイクなのだ。華のない映画なのだから、せめてヒロインぐらいは華のあるキャラクターにしてほしかった。