★三浦晴海『屍介護』角川ホラー文庫

 三浦晴海『屍介護』角川ホラー文庫を読了。


 なんともえぐい描写の続くホラー小説で、この手の小説の苦手な人には絶対にオススメはできない。
 山奥の屋敷で、住み込みのヘルパーとして働くことになった主人公が面倒を見ることになった相手は、肌は変色し、頭に黒い袋を被せられ、まるで身動きもしない死体としか思えない女性だった。しかも、その職場の先輩から強いられたのは、生肉のミンチをその女性の喉に流し込むという食事だった。
 いやはや、えぐい。このエグさがこのホラー小説のセールスポイントなわけだけれど、それを支える主人公の心理描写に説得力がともなっていないのが実に残念。「いや、そこでそうは思わんだろう。そこでその行動はとらないだろう」と、突っ込みたくなる描写が頻繁に出てきてしまうのだ。そして、クライマックスで明らかになる驚愕の真実も、あまりにも唐突すぎて受け入れがたい。あり得ない設定をいかにも「あり得る」と思わせる工夫が大切なのに、そこがおざなりにされているのだ。
 ホラー小説というジャンル、手軽そうでいて、相当の実力を要求するジャンルなのだ。