★平井和正『月光学園』出版芸術社ふしぎ文学館

 平井和正『月光学園』出版芸術社ふしぎ文学館を読了。


 収録作品は「悪徳学園」「魔女の標的」「ママの性教育」「夢のふたつの顔」「赤ん暴君」「美女の青い影」「転生」の7篇。帯に「学園SF傑作集」とあるが、必ずしも学園を舞台にした作品ばかりではない。中高校生を主人公にした作品を集めた短編集となっている。
 いずれも大昔に夢中になって読んだ作品ばかりだが、いまあらためて読んでも、やはり面白い。初期の平井和正の濃密な文章をたっぷりと満喫することができる。とりわけ凄いと思うのは「悪徳学園」「魔女の標的」「美女の青い影」。
 そして、あらためて読んでみて気がついたのだけれど、美女を描く時の平井和正の筆致の素晴らしさ。もうね、どこからどう見ても美女以外のなにものでもないという描写なのだ。中学生ぐらいでこれを読んだら、そりゃ魅了されるよね。
 自分は『幻魔大戦』まではなんとか平井和正の小説を読み続けていたけれど、実はやたらと長大な作品を書くようになってからの平井和正はまったく評価していない。初期の「爪で岩に文字を掘る」とまで表現した文章の密度が失われたあとの作品は、読んでもまったく心が高揚することはなかった。『悪霊の女王』までは、新刊が出るたびに「すげえ!」と興奮しながら読んだものだけれど、自分にとってはあれが平井和正に興奮した最後の作品だった。