★パフューム ある人殺しの物語

 『パフューム ある人殺しの物語(2006年)』を観る。

 先日読み終えたばかりの『香水 ある人殺しの物語』を映画化したものであるが、ほとんど原作そのままに映像化されていてびっくりした。「匂い」という映像で見せることのできないものを題材にしていながら、実に見事に映像化されているではありませんか。主人公が通りすがりの女性の匂いに魅せられて最初の殺人を犯すに至る描写など、本当に見事で、「匂い」って凄いとか思わされてしまう。
 文章で読んだのではいまいち分かりにくかった匂いの注出方法なども、こうして映像で見せられると実にわかりやすく、小説と映画とが互いに補完しあうような関係が成り立っている。
 18世紀のパリを再現した美術も素晴らしい。これはさぞかし金がかかっていることだろう。
 そして、圧巻のクライマックスシーン。なんと、究極の香水に酔いしれた群衆による大乱交シーンが繰り広げられるのだ。そのシーンに起用されたエキストラの人数はなんと750人! 処刑台をかこむ広場のいたるところで、無数の裸体が組んずほぐれつしているシーンを本当に再現するとは! これなどは小説ならでは可能なシーンと思っていたら、本当に映像化しているんだもんな。
 というわけで、小説を気に入った人ならば、この映画を観る価値は充分にあるだろう。