★荻原秀夫『荒くれ社員』豊書房

 荻原秀夫『荒くれ社員』豊書房を読了。

 主人公は、チャンバラ映画を得意とする日宝映画の配給部に所属する柔道五段、空手四段の快男児・大羅貫平(通称「おらかん」、もしくは「あらかん」)。戦争映画を得意とする大洋映画を相手に映画館での配給権をめぐってしのぎを削っている日々なのだが、ライバルに雇われたチンピラ、映画会社を食い物にせんとする業界紙のライター、配給部の女性社員を虎視眈々と狙う映画館主、そして貫平に恋する女たちが入り乱れ、あとからあとから事件がまきおこる。

 昭和35年に刊行されたいわゆる貸本小説で、読んでいる間さえ楽しければそれでOKというスタンスで書かれた小説なのだろう。それほど凝ったストーリーでもないし、魅力的なキャラクターが登場してくるというわけでもない。それでも、そこそこ楽しく読めるのだから、それなりに当時の娯楽小説としては及第点をとれる作品なのだと思う。
 ちなみに『荒くれ社員』というタイトルではあるけれど、主人公の貫平はいたって真面目な青年なので、タイトルに偽りありではある。