★芦花公園『異端の祝祭』角川ホラー文庫

芦花公園『異端の祝祭』角川ホラー文庫を読了。

この世にあらざるものを見てしまう能力を持つ女性、島本笑美。その能力のために社会に適応できず、就職もままならなかったのだが、なぜか一流企業への就職が決まってしまう。だが、出社した彼女を待ち受けていたのは、仕事とはほど遠い謎の儀式の連続だった。
心霊案件の相談事務所を開設している佐々木るみと、彼女のサポートをしている青山幸喜。ろくに依頼もなく、暇をもてあましていた彼らのもとにもちこまれたのは、謎の組織にとりこまれた妹を取り戻してほしいという島本笑美の兄からの依頼だった。
島本笑美をとりもどすための行動を起こするみと青山だったが、その前に立ちふさがったのは彼らの力をはるかに凌ぐ存在だった……。

前作『ほねがらみ』は、自分向きの作品ではなかったのだけれど、これは面白かった。前作同様、さまざまなネタが盛り込まれていて、著者の不可思議なものに関する引き出しの多さに圧倒される。うちの息子は諏訪大社で結婚式を挙げているのだけれど、あの諏訪大社でそんな儀式が行われているなんて、ぜんぜん知らなかった。宗教関連の用語などもふんだんに出てきて、よっぽどこの手のことが好きで、いろいろな知識をため込んできた人なのだろう。
そして、主人公・るみの壮絶な過去と、表向きとはまったくことなる内なるキャラクターが明らかになった瞬間の驚愕。いやあ、あれには驚いた。

次作の『漆黒の慕情』も、本作と同じ佐々木事務所が出てくるシリーズとのこと。これは、読まねばなるまい。