★白鳥あかね『スクリプターはストリッパーではありません』国書刊行会

 白鳥あかねスクリプターはストリッパーではありません』国書刊行会を読了。

 書名を見ても、どういう内容の本なのか、まったくピンと来ていなかったのだけれど、国書刊行会50周年記念で配布された小冊子で「面白そう!」と思って入手したもの。
 スクリプターというのは、映画監督の傍らにいて、撮影したカットの記録を詳細にとり、あとで編集する際の重要なデータを提供する仕事……というだけではなく、さまざまな場面で監督を補佐し、俳優の対応もするという、とにかく映画作りにおいて幅広い仕事をこなさなければいけないとても大切なお仕事……ということらしい。
 そして著者は、新藤兼人監督の作品でスクリプターとしてのキャリアをスタートし、日活の〈渡り鳥シリーズ〉など数多くの名作に携わり、さらには日活ロマンポルノを経て、フリーとなった後も数々の名作映画に関わってきた方なのだそうだ。
 その超ベテランスクリプターに、映画撮影の現場であったさまざまなエピソードや、映画人たちの素顔をインタビューを通じて語ってもらったのが本書。
 自分は日本映画に関する素養が致命的なまでに欠如していて、ここに出てくる日本映画をほとんど観ていないのだけれど、それでも映画撮影の現場でのさまざまなエピソードはとても面白かった。日本映画の青春時代だったのだろうという印象を強く受けた。そして、それが著者の青春時代とも重なったことで、こうまで面白い1冊になっているのだと思う。
 本書には、撮影現場の貴重な写真が数多く掲載されているのだけれど、その写真には、最初は溌剌とした若者であった著者が、徐々に年輪を重ねていく様子がしっかりと移されている。文章を読みながらそうした写真を見ていくことで、ひとりの女性の人生を追いかけるという疑似体験もできる1冊だった。

 ちなみに、自分は本書を古本で購入したのだけれど、本を開いたら著者のサインが入っていた。本書を読了したいま、自分にとって著者は身近に感じられる存在となっているので、サインが入っていたのはなんとも嬉しいことだった。