★CRUSH KONG CURLY

 フィリピン映画『CRUSH KONG CURLY(2021年)』を観る。

 エラ(AJ・ラヴァル/AJ Raval)は、自分のエロティックな動画を配信するサイトを運営して大人気となっていて、そこからそれなりの収入も得ている。大家でありエラの友人でもあるキップ(チャド・キニス/Chad Kinis)とチェリー(ローレン・マリーニャス/Loren Mariñas)も、エラの活動に理解を示して、撮影を手伝ったりしていた。
 ところが、部屋の壁が崩れたために現れた隣人の建築家ピーター(ウィルバート・ロス/Wilbert Ross)は、エラのしていることがモラルに反していると彼女を否定する。だがエラは、自分は世の男性たちにファンタジーを提供しているのであって、何も悪いことはしていないと主張する。また、エラがお金を必要としているのは、祖母の目の手術費を稼ぐためでもあり、将来の夢である白い家を建てるためでもあった。
 人を理解しようともせずに弾劾することの傲慢さを指摘されたピーターは、しだいに彼女に理解を示すようになると同時に、徐々に彼女に惹かれていくのだが……。

 このところのビバフィルムが世に送り出す映画は、そのほとんどがソフトコアポルノと化していて、やたらと女性のヌードが登場し、セックスシーンが繰り返される。おかげで最近のビバフィルムの映画にはいささか食傷気味なのだけれど、ビバフィルムのみが元気に新作を製作しているという現状ではビバフィルムの映画を観るしかないというのが実に哀しいところ。
 本作もそうしたソフトコアポルノの1本であるのだけれど、主演のAJ・ラヴァルがやたらと可愛くて気になっていたので手を出したという次第。
 実際、AJ・ラヴァルは非常に魅力的な女優だった。とにかく可愛い。非常に陽性のキャラクターで、彼女の笑顔には思わず引き込まれてしまう。とにかく魅力的なのだ。彼女ほどのルックスがあれば、なにも裸にならなくてもよさそうなものだが、それが許されないのがいまのフィリピンの映画界なのだろう。
 そうしたAJ・ラヴァルの魅力だけでなりたっているような映画で、明るい艶笑譚としてそれなりに楽しめる映画に仕上がっていたりする。だが、残念ながら途中からシリアスな展開が待っていたり、そのくせ最後にはいささか安易なハッピーエンドが待っていたりして、そのあたりはちょっと残念な映画となってしまっている。
 シリアスな展開とか不必要なセックスシーンとかをカットしたら、ちょっとエッチな青春映画の佳作になる可能性だってあっただろうに。

 主演のAJ・ラヴァルは、ダリル・ヤップ監督の『Paglaki ko, gusto kong maging pornstar』ではポルノ女優にあこがれる女の子の役で出ていて、そのあまりの可愛らしさに注目していたのだけれど、実はナディーン・ルストレ主演のダンス映画『Indak』にも出ていたらしい。若いダンサーのひとりかと思ったら、ヒロインが島で暮らしている時の友人とのこと。機会があればチェックしてみよう。また、ココ・マルティン主演の超人気テレビドラマ『Ang probinsyano』に出たりもしている。2022年になってからはすでに4本の映画に出演しているので、こちらもチェックしなければ。

 監督のGBサンペドロ(GB Sampedro)は、お初にお目にかかる監督だが、テレビシリーズを手がけながらも2021年に2本、2022年に5本の映画を撮っている。スリラー、ドラマ、コメディと幅広いジャンルの映画を撮っているようだが、最近の作品はいずれもセクシーな女優がポスターとなっていて、ビバフィルムで映画を撮るということはこういうことなんだなと実によくわかる。