★クロスロード

 次は『ウォリアーズ』とかいいながら、なぜか同じくウォルター・ヒル監督の『クロスロード(1986年)』を観てしまう。

 この作品を観るのは1987年の劇場公開時以来、なんと36年ぶりだ。ブルースに魅入られた若者が、年老いた伝説のブルースマンと旅をしながらブルースの魂をものにしていくというストーリーはある意味定番かもしれないが、この作品がとんでもないのはクライマックスだ。年老いたブルースマンがかつて悪魔と交わした契約書を破棄させるために、悪魔の配下であるギタリストとギター対決をするのである。そのとんでもない設定を、大まじめに真っ正面から撮ってしまった映画なのである。きっと、他の監督が撮ったならば「トンデモ映画」に仕上がっただろうけれど、本作はそのとんでもない展開でありながら名作の香り漂う素晴らしい作品に仕上がっている。おいおい、ウォルター・ヒル、とんでもない映画監督だぞ。

 ジュリアード音楽院クラシックギターを学んでいるという設定の若きギターの天才ユジーンを演じているのはラルフ・マッチオ。『ベスト・キッド』でブレイクしたあとの作品で、本作に続いて公開されたのが『ベスト・キッド2』というのだから、まさに旬の時期である。この映画のためにめちゃくちゃギターの特訓を受けたのではないかと思うのだけれど、『ベスト・キッド』の空手の方がよほど楽だったのではないだろうか。ちゃんと指と音とが一致しているもんなあ。
 そして、年老いたブルースマンのウイリーを演じているのがジョー・セネカ。いろいろな名作に出ているベテラン俳優だけれど、本作のブルースマンほどのハマリ役はなかったのでは。
 だけど、本作の真の主人公というべきはライ・クーダーの音楽だ。もう、全編、ライ・クーダーの音楽に彩られた映画なのだ。『ストリート・オブ・ファイヤー』も音楽が主要な要素となっていたけれど、こちらはさらに音楽の重要性が大きい。というか、音楽がダメだったらまったく成り立たない映画なのだ。

 いやあ、楽しかった。ブルースにどっぷり浸ったために、思わず次は『ブルース・ブラザーズ』を観たいぞとか思ったけれど、それはまた今度だな。次こそは『ウォリアーズ』だ。(本当か?)