★ウォリアーズ

 ウォルター・ヒル祭り4本目の作品は『ウォリアーズ(1979年)』

 ニューヨーク中のストリートギャングブロンクス終結する。ストリートギャング界の大物サイラスが、ニューヨークを自分たちの支配下におさめるために声をかけたのだ。ところが、その集会の最中にサイラスは射殺され、「ウォリアーズ」がその犯人に仕立て上げられてしまう。かくして、ニューヨーク中のストリートギャングから追われることになった「ウォリアーズ」のメンバーは、地元のコニーアイランドへと必死の逃亡をはかるのだった。

 随分前に観た記憶の中では、「ウォリアーズ」のメンバーがずっとグループで逃げていたと思っていたのだけれど、見直してみると途中でバラバラになるし、しかもめちゃくちゃ余計な「お前らバカかよ」というような寄り道をしていたりする。記憶の中で、余計なエピソードが省かれて、純度の高い映画になってしまっていたらしい。
 それにしても、よくよく考えてみると奇妙な映画をけっこう撮っているウォルター・ヒルだけれど、本作もなかなか変な作品だ。だって、野球のユニフォームを着て顔を白く塗りたくったストリートギャングとかが、バットを持って襲いかかってくるんだよ。ローラースケート履いたヤツが襲いかかってくるんだよ。どう考えたって変じゃん。
 あと、サイラスが殺されたあとのチームを率いるマサイだけれど、どこからどう見てもブルース・リー死亡遊戯』に出てくるカリーム・アブドゥル=ジャバーじゃん。ま、あれほど背が高くはないけど。だけど、『死亡遊戯』が1978年で、本作が1979年てことは、つじつまがあうな(笑)

 ウォルター・ヒルにとって『ストリートファイター』『ザ・ドライバー』に次ぐ3本目の監督作品。『ザ・ドライバー』の興行的な失敗のあとゆえに低予算で撮ることを余儀なくされ、無名の俳優を起用しているのだが、本作の成功がこのあとの快進撃につながったと言えよう。
 主役のスワンを演じているのはマイケル・ベック。これが実にかっこいい。常に冷静沈着なキャラクターで、しかも表情に凄みもある。なのに、なんで翌年の主演作がオリビアニュートンジョンと共演した『ザナドゥ』なんだよと、あきれかえったりしたものだけれど(でも、『ザナドゥ』も好き)。
 そして、まったくの部外者なのに「ウォリアーズ」の逃走にくっついていくマーシーを演じているのが、『ストリート・オブ・ファイヤー』で主人公の姉を演じていたデボラ・ヴァン・フォルケンバーグ。『ワイルド・スピード』などのミシェル・ロドリゲスにつながる色っぽい姐チャンで、実にいい。
 クレジットを見ていて驚いたのだけれど、大物プロデューサーのフランク・マーシャルの名前があるではありませんか。フランク・マーシャルにとっては、かなり初期のプロデュース作品であるらしい。
 また、アシスタント・プロデューサーにジョエル・シルバーの名前もあった。この頃はまだ駆け出しのプロデューサーだったのだろう。