【読書】マーク・グリーニー『暗殺者の奪還』ハヤカワ文庫NV

 マーク・グリーニー『暗殺者の奪還』ハヤカワ文庫NVを読了。
 基本的にコートランド・ジェントリーという超凄腕の工作員を主人公にしたシリーズなので、「007」とか「ミッション・インポッシブル」のような、ひとりの主人公が凄腕の仲間とともにミッションをクリアしていくというようなストーリーがメインとなるのだけれど、今回はなんとスケールを拡大して戦争アクションものとなっている。
 中国にとらわれてロシアに引き渡されたジェントリーの恋人のゾーヤ。元SVR(ロシア対外情報庁)の将校でありながら、アメリカCIAの諜報員として活動していたために、ゾーヤはロシアで処刑されたものと思われていた。ところが、それを受け入れようとしないジェントリーは、ゾーヤの生存を信じて、ゾーヤ奪還のためにロシア潜入をめざす。
 前半は、なんとかしてロシアに潜り込もうとするジェントリーの暗闘を描く。ろくに睡眠もとれず、疲れ果てながら脇目も振らずにロシアに潜入する方法を模索するジェントリーの鬼気迫る行動に、ページをめくる指がとまらなくなる。こうまで疲労困憊して、そのためにミスをおかすジェントリーの姿というのは、いままでのシリーズを通して初めてではないだろうか。
 やがて、CIAがゾーヤが生存している証拠を手に入れ、そこでシリーズ読者にとってはお馴染みのマシュー・ハンリー、ザック・ハイタワーといったキャラクターが登場してくる。ゾーヤがとらわれている監獄にロシア次期大統領と目されていた人物の妻が収監されていて、その夫もさほど離れていない監獄に収監されていることが判明し、ゾーヤ奪還を目指していたジェントリーの行動を利用してそのふたりを脱獄させることがアメリカにとっての利益になると判断されたのだ。かくして、単独でロシアに潜入したジェントリーにサポートがつくことになり、さらにはウクライナ軍、ロシア国内の反政府組織・自由ロシア軍団を巻きこんでの奪還作戦が派手に展開されることとなるのだった。
 終盤は爆薬を積んだ無人攻撃機、ドローン、戦闘機が飛びかい、いたるところで爆発があり、四方八方からロシア特殊任務部隊・スペツナズの兵士が押し寄せてくるという、なんとも壮絶な展開となる。
 『暗殺者グレイマン』に始まるこのシリーズ、すでに本作が14作目とのことだけれど、ぜんぜんテンションが落ちない。落ちないどころか、相変わらずめちゃくちゃ面白く、ぐいぐいと読まされる。過去の読書記録をチェックしてみると、コンスタントに年1作のペースで読んでいることがわかる。しかも、その間に新潮文庫の『欧州開戦』『イスラム終戦争』などのジャック・ライアンシリーズ、『レッド・メタル作戦発動』『アーマード 生還不能』『アーマード2 極限死境』などといった作品も書いている。それだけ書いていて、このレベルを維持しているのだから、実にもってたいしたものだ。
 次作『The Hard Line』は、今年の2月にアメリカで刊行される予定となっているらしい。インスタグラムによるとサイン本の販売もあるようなのだけれど、対象はアメリカ国内在住者のみらしい。残念。おそらく、12月に日本でも翻訳が出るのだろう。実に楽しみだ。