【映画】ザ・ボート

 『ザ・ボート』という映画を観た。
 ホラー映画なのかなという程度の認識で観だしたら、とんでもない映画だった。
 ひとりの男が小さなボートに乗って海へと漁に出る。すると、濃霧の中で一隻のクルーザーヨットに遭遇する。呼びかけてもなんの反応もないので、ボートをクルーザーヨットにしっかりと結びつけてから乗り込み、船内を調べる。誰かが乗っていた痕跡はあるものの、乗員はただのひとりもいない。首をかしげながらボートに戻ろうとすると、しっかり結びつけていたはずのボートが姿を消していた。
 濃霧が晴れると、どことも知れぬ大海原の真ん中をヨットは漂っていた。ナビゲーションシステムはなく、自分がどこにいるのかわからない。無線で呼びかけても返事はない。大海原にただひとり。帆を張り、エンジンをかけ、移動を開始するが、どこに向かえばいいのか。
 だが、悪夢が始まるのはそれからだった。なんと、トイレの中に閉じ込められてしまったのである。トイレのドアが開かなくなってしまったのだ。しかも、ヨットは嵐の中に突入し、浸水が始まってしまう。
 だが、だが、それすらもまだ悪夢の始まりに過ぎなかった。やがてヨットは意思あるもののように、男を翻弄していくのだった……。
 すげえ。このシンプルな設定で、グイグイと引っ張っていく。はたして、どう展開していくのか、めちゃくちゃ引き込まれて見入ってしまった。もし、いまでもファンタスティック映画祭があったなら、これは絶対に上映作品に選ばれたことだろう。そういう類いの映画なのだ。
 エンディングクレジットに出てくるキャストは「船乗り ジョー・アゾパルディ」、これだけ。ずっと、たったひとりだけのドラマなのだ。セリフも、「なんてこった」などの独り言のみ。
 監督はウィンストン・アゾパルディ。主演俳優の兄弟かなにかだろうか? 『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』『ナポレオン』『オリエント急行殺人事件』などのプロデューサーであるとのこと。大物じゃん。
 上映時間は88分。