【読書】ダフネ・デュ・モーリア『人形』創元推理文庫

 ダフネ・デュ・モーリア『人形』創元推理文庫を読了。
 表題作以下14本の短篇が並ぶ。全体的に、シニカルな味わいの作品が多く、作品によっては「この作者は、本当に辛辣で意地の悪いものの見方をするなあ」と思わずにはいられない。頭のよい若い女性ならではの感性によって書かれた作品が多いという印象なのだ。人間はしょせん、お互いにわかり合えないものといったテーマの作品も多い。それぞれの執筆年の記載がないのだけれど、解説に「初期短篇集」とあるので、いずれも著者が若い頃に書いた作品なのだろう。若い頃から、そういうシニカルなものの見方をしていた女性であったらしい。
 びっくりしたのは表題作で、なんと登場するミステリアスな美女の名前が「レベッカ」なのである。主人公はそのレベッカに翻弄されるのだけれど、実はそのレベッカには秘密があって……という作品。1928年、デュ・モーリアが21歳の時に書かれた作品とのこと。いまから100年ほど前の作品なのだけれど、そんな時代に若い女性がこんな小説を書いていたということにもびっくりさせられる。
 これでデュ・モーリアの作品は3冊読んだのだけれど、どちらかというと自分には長編の方が面白く感じられた。手元には未読の長編がまだ何冊もあるので、ゆっくり読んでいくことにしよう。