【映画】幽霊刑事

 香港映画『幽霊刑事(7号差館)』を観る。
 エリート捜査官のフォン(アンディ・ホイ)は、銃撃戦で頭を撃ち抜かれて昏睡状態に陥る。それから2年の月日が流れ、フォンは奇跡的に意識を取り戻し、復帰のためのリハビリを開始する。そして、献身的に彼の面倒をみてくれる看護師のオスカー(ロレッタ・リー)といつしかつきあいはじめるようになるのだが、実はフォンは意識を取り戻したときから死者の霊を見るようになっていたのだった。
 一方、フォンが昏睡状態にある間に、女性看護士だけを狙う連続殺人事件が発生していた。捜査に復帰したフォンはその事件を担当することになるのだが、オスカーがあやうく被害者になりかけるという事件が発生する。病院で出会った元精神科医キッド(チョン・ダッミン)の霊から、オスカーの生命オーラが弱くなっていると告げられたフォンは、彼女がまだ犯人から狙われていると確信し、犯人に対して罠をしかけるのだが……。
 監督はハーマン・ヤウ。最近では『バーニング・ダウン 爆発都市』『ホワイト・ストーム』といったアクション映画にも力量を振るっている監督だが、なんといっても『八仙飯店之人肉饅頭』『エボラ・シンドローム/悪魔の殺人ウィルス』の監督である。そのハーマン・ヤウの撮ったホラー映画なのだから、そりゃもう恐ろしい展開になるのかと思いきや、意外とそんなことはなかった。
 幽霊が見えるのだけれど、それが幽霊なのかそうでないのか見分けがつかないという描写や、容疑者をつかまえたところで被害者の亡霊に面通しをさせるという描写などでは、ハーマン・ヤウらしいゾクゾクする雰囲気は出ている。でも、全体としてみると、グロ描写はほとんどなく、ホラー描写もけっこうおとなしめなのだ。なんだ、こんなものか。しかし、そう思わせて油断をさせておいて……、うがあっ、やっぱりハーマン・ヤウなのだった。いやはや、これはなかなか後味が悪いぞ……、で終わればいいものを、そのあとに余計な描写があって、後味が悪いんだかいいんだか、なんとも微妙な終わり方になってしまっている。うーむ……。困ったな。
 ところで、行方不明になった女性看護士の遺体が山の中から3人だけ見つかっているのだが、それらはいずれも被害者の亡霊が警察署に現れて、当直の刑事に埋められた場所を伝えたものであった。そして霊から場所を告げられた刑事2人は亡くなり、3人目の刑事はフォンの部下であった……というエピソードがきれいさっぱり忘れられているような気がするのだけれど。3人目の刑事も呪われたと怯えていたのに、それっきりなにもないぞ。そもそも、特殊な能力を身につけてしまったフォンでなくても幽霊から埋められた場所を教えられたりしたら、この映画のキモとなる設定が無意味になってしまうではないか。
 というわけで、部分的には面白いし、なかなかショッキングな場面もあったのだけれど、トータルとしてはいまいちかな。
 そして、主人公を演じているアンディ・ホイが、どうしてもフィギュアスケーター織田信成に見えて仕方がなかったのだけれど、それって僕だけなんだろうか?