【読書】マネル・ロウレイロ『生贄の門』新潮文庫

 マネル・ロウレイロ『生贄の門』新潮文庫を読了。
 末期癌の息子を抱えた女性捜査官のラケルは、メンシニェイラと呼ばれる心霊治療師に最後の望みを託して、彼女の住むガリシア地方へと異動を申し出る。そこでラケルが遭遇したのは、人里離れた山の頂、巨大な門を思わせる巨石遺物の足元で、えぐり取られた心臓を抱きかかえた若い女性の遺体が発見されるという儀式めいた殺人事件だった。相棒となったフアンとともにその捜査に乗り出すラケルだが、そのときから不穏な出来事が次々と発生していく。一方、彼女が頼りにしていたメンシニェイラが行方をくらまし、どうもその背後にはラケルが手掛けている殺人事件が関係しているものと思われた。かくして、息子を救うためにも事件の解決にのめり込んでいくラケルであったのだが……。
 スペイン発のホラー小説である。「ケルト伝説に彩られたスペイン・ガリシア地方を舞台に儀式殺人を描いた、〈スパニッシュ・ホラー〉のベストセラー小説、ついに日本上陸。」と帯にあるのを読んで、もっといかにもスペインらしい雰囲気の横溢したホラー小説なのかと思っていたら、あまりそういう雰囲気はなくて、舞台設定を変えればアメリカで書かれたホラー小説でも通用するのではないかと思った。そこがいささか物足りない部分でもあるのだけれど、逆に、それだからこそ読みやすかったのかもしれない。
 とにかく、スイスイと読めてしまう。最後の方などは、グイグイと引っぱられるようにして読んでしまった。クライマックス近くでは、大急ぎで息子を救いに行かなければならない場面なのに、主人公たちが始める口論に「そんな悠長なことをしている時間はないのだから、急げよ!」とせっつきたくなるほど、先へ先へと読み進めたくなるタイプの小説であった。
 そして、おおっ、こういう終わり方でしたか。というか、終わってないぞ。12年後には、いったいどういう事態が発生してしまうのだと、先のことが心配になってしまう。
 いやあ、面白かった。
 同じ作者の作品では、マグノリアブックスから出ている『最後の乗客』という作品があるらしい。こちらもクトゥルー神話じみた匂いのする作品とのことなので、ちょっと気になるぞ。