★リチャード・レイモン『殺戮の野獣館』扶桑社ミステリー

 リチャード・レイモン『殺戮の野獣館』扶桑社ミステリーを読了。
 謎の野獣が棲みついていると言われ、過去に何度も凄惨な殺戮事件の起きた「野獣館」。かつてその「野獣館」から命からがら生き延びたラリーは、彼を苦しめる悪夢を払拭するため、野獣を倒すため、ジャドという男を雇って「野獣館」に戻ってくる。
 一方、小児性愛者でサディストの夫のロイが刑務所から出所したという知らせを受けたダナは、娘のサンディを連れて逃走の旅に出る。だが、その途上で自動車事故を起こし、「野獣館」のある街に足止めをくらうことになる。そこでダナはジャドと出会い、電撃的な恋に落ちるのだが、刑務所を出たロイは殺戮を繰り返しながら、ダナとサンディの後を追いかけるのだった。

 なんとも鬼畜なホラー小説である。本来、もっとも鬼畜なのは「野獣館」に棲みついている野獣のはずなのだけれど、ダナを追いかけるロイの方がはるかに鬼畜な存在なのだ。追跡の途中で出会った家族を殺害し、その娘をレイプしてつれまわすのである。人を殺すことになんのためらいもなく、少女をレイプすることにもなんら躊躇がないという存在なのである。
 一方の野獣はというと、夜にしか出てこないので、日中は「野獣館」の見学ツアーが行われており、夜に「野獣館」に入らない限りはなんら問題はなかったりして、よくよく考えてみればそれほど恐ろしい存在ではなかったりする。
 それにしても、「えっ、いまそこでエッチしちゃう?」と、エッチ心が抑えきれなくなっているダナとジャドにもあきれるが、館の所有者である女性と野獣との関係もまたB級ホラーのお手本のようなお下劣さで実に嬉しいかぎり。いやあ、さすがにこの展開は予想のはるかに上をいったぞ。
 ラストシーンは、本を叩きつけるか、快哉をあげるか、そのどちらかで読者の人間性があからさまに試されてしまうという、実に恐ろしい場面となっている。
 実は、けっこう喜んで読んでしまったのだけれど、この小説を喜んで読んでしまっていいのかと、ちょっと不安にもなるB級エログロお下劣鬼畜ホラー小説なのでありました。