★トマス・オルディ・フーヴェルト『魔女の棲む町』マグノリアブックス

 トマス・オルディ・フーヴェルト『魔女の棲む町』マグノリアブックスを読了。
 人口約3000人の町、ブラックスプリング。その町は、魔女に呪われていた。350年以上も前、魔女裁判によって処刑されたキャサリンに呪われたその町の住民は、町から外に出ると強烈な自殺願望にかられるため、一度住み着いたら二度と町から離れることができないのだ。そして、その町のありとあらゆる場所に、両目と唇とを糸で縫いとめられたキャサリンがたびたび姿を現すのだった。長年にわたって町は、外部に対してその魔女の存在を隠蔽し続けてきた。だが、やがてそのことに耐えられなくなった若者の行動によって、地獄の釜のふたが開くことになるのだった……。
 かなり奇妙な設定の小説である。なにしろ、町に現れる魔女は何をするでもなく、ただ思いも寄らないところに出現して、時としてはずっとその場に立っているだけなのだ。町の人間もその存在にすっかり慣れていて、家の中に現れれば布を被せて観ないフリをするし、町中に現れればそのまわりに囲みを作って町の外部の人間にばれないようにするのである。つまり、呪いと言っても、町から出られなくなるという以外には、それほど害はないのだ。
 ところが、そのことに我慢できなくなった若者たちの行動によって、魔女の呪いが顕現する。そのあとの展開は、まさに邪悪のひとこと。予定調和的な展開を予想していると、あまりにも邪悪な展開に怖気を振るうことになる。とてつもなくスケールのでかい地獄絵図が繰り広げられることとなるのだ。言うなれば、町中が『キャリー』のプロム会場になるとでもいうか。さらにはそこに、スティーヴン・キングの『ペット・セマタリー』的な要素すら付け加わってくるという恐ろしさ。クライマックスの壮絶さには、ひたすら圧倒される。

 というわけで、かなりオススメのホラー小説ではあるのだけれど、自分にはどうにも文章が読みにくかった。描写が執拗かつ単調で、ぐいぐい読み進めるということができなかった。文章にスピード感がないのだ。おそらくこれは翻訳の問題ではなく、原文がそういうタイプの文章なのだろう。そして、あくまでも僕にとって読みづらい文章だったというだけで、人によっては特に気にならずにすいすい読めたりもするのだろうとは思うのだけれど。
 いずれにしても、中盤以降の展開は凄い。