★嵐を呼ぶ男

嵐を呼ぶ男』1957年
 監督:井上梅次、主演:石原裕次郎北原三枝
 日活がらみの本を2冊ほど読んで、有名だけれど未見だった本作に手を出してみた。裕次郎がドラムを叩きながら歌うシーンは有名で、そこだけはいろいろなところで繰り返し目にしていたので、てっきりそこがクライマックスかと思っていたのだけれど、ぜんぜんそんなことはなかった。
 喧嘩っぱやくて騒ぎをおこしてばかりいる国分正一(石原裕次郎)は、大のドラム好き。ドラムを叩いていさえすればご機嫌という若者だ。一方、人気抜群のドラマーのチャーリーは人気を鼻にかけて、世話になったナイトクラブを捨てて他の事務所へと勝手に移籍してしまう。その空いた穴に起用された正一はみるみる人気が出て、チャーリーの人気を脅かすようになり、ついにはドラム対決をすることになる。ところがその前日、正一はチャーリーと組んだヤクザに襲われて左手を負傷してしまう。
 このあと展開されるのが、あの有名なドラムを叩きながら歌う場面なわけだけれど、ドラマはそのあとも続き、弟の成功のために愛する女性との別れ、彼を拒絶してきた母親への渇望などが描かれ、みごとなまでに感情をゆさぶるドラマが展開されるのだ。
 いやあ、これほどの名作とは思っていなかった。グレながらも、母親の愛情を求めてやまない裕次郎の痛ましいばかりの表情にぐっと来てしまうではないか。