★シャウト・アウト

 タイガー・シュロフ主演のインド映画『シャウト・アウト』を観る。


 原題は『Baaghi 3』となっていて、『タイガー・バレット(Baaghi 2)』の続篇ということになっているが、タイガー・シュロフ主演の超絶アクション映画という以外はなんら関係のない独立した作品である。ちなみに、『タイガー・バレット』を観た時の自分の感想はというと「強引映画選手権というのがあればかなり上位に食い込む有力映画だった。主人公が敵を倒す展開も超強引なら、最後の展開も超強引。超絶アクションもめちゃくちゃ強引だった。嫌いな映画じゃないけど、人には勧められないな。」というものだった。なので、本作もちょっと不安を抱きながら手を出したのだった。

 兄思いで、兄のヴィクラム(リテーシュ・デーシュムク)を傷つける者には容赦のないロニー(タイガー・シュロフ)。警察官だった父から、死の間際に「兄を守れ」と言われた言葉を忠実に守り続けていた。一方、気弱なヴィクラムはロニーに守られることに慣れていて、自分でものごとを解決する能力は皆無。にもかかわらず、父のあとを継いで警察官になってしまい、たびたび地元の凶悪なギャング組織を相手とする窮地に追い込まれるのだが、そのたびにロニーが彼を救い、いつしかヴィクラムは優秀な警察官と見なされてしまう。
 と、ここまでの前半はけっこうしょもない展開ぶりで、不安が的中しちゃったかなあと、いささかガッカリさせられてしまう。が、ここからが凄いのだ。
 書類を届けるためにシリアにおもむいたヴィクラムは、そこでテロリスト集団に拉致されてしまう。インド、パキスタンなどから家族を誘拐し、誘拐した人間を家族を人質にして人間爆弾としてさまざまな施設に送り込むという、凶悪な集団だった。しかも、軍用ヘリ、戦車などを保有する、ひとつの国家と呼んでいいほどの規模の集団であった。
 兄が拉致されたことを知ったロニーは、シリアに乗り込むと、単身でテロリスト集団に挑んでいく!

 この後半が凄かった。たったひとりで軍用ヘリや戦車に肉弾戦を挑んでいくのである。相手は「ひとつの国家」と呼べるほどの組織だというのに、たったひとりで闘いを挑んでいき、片端から撃破していってしまうのである。テロリスト組織の頭目は「襲ってきたのはなにものだ? アメリカ? ロシア? まさかモサド?」と呟くのだが、なんとたったひとりのインド人なのだ。
 片端からテロリスト組織の基地を破壊しまくるロニー! いやあ、凄い凄い。鬼神の如きその暴れっぷりに惚れ惚れしてしまうのだけれど、何ヶ所かではあまりにも凄すぎて思わず笑いすら出てしまう。
 が、戦車軍団と戦うロニーを観ていて、前に観た中国映画が思い出されてしまう。そう、主人公がおのれの肉体だけを武器に戦車軍団に闘いを挑むというシーンが、ウー・ジン監督・主演のアクション映画『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』にそっくりなのだ。『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』の製作が2017年、本作が2020年。これは、絶対に『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』を観て、「戦車軍団 vs. 主人公の肉体」というバトルを自分たちでもやってみたくなったに違いあるまい。『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』よりもスケールアップしていて、使用している火薬量も大増量なので、こちらの方が迫力があるにしても、ベースとなっているのはウー・ジン対戦車の闘いなのだ。

 いずれにしても、とてつもなく凄いアクション映画だった。もう、気分はほとんど戦争映画。前半のちょいとしょぼい展開にあきれて放り出したりしてはいけない。見どころは後半にいやというほど詰め込まれているのだ。