韓国映画『パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女』を観る。
非合法であろうとなかろうと、依頼されたものをなんでも運ぶのが仕事の天才的なドライビングテクニックを持つウナ(パク・ソダム)。この設定で思い出すのはもちろんウォルター・ヒル監督の『ザ・ドライバー』でありジェイソン・ステイサム主演の『トランスポーター』なわけだが、犯罪に巻き込まれて悪徳警官に追われる少年とかかわるという展開で思い出すのはもちろん『グロリア』なわけだ。もっとも、自分は『グロリア』をちゃんと観ていないのだけれど。そういう、過去の名作の美味しい設定を換骨奪胎して、きっちりエンターテインメントに仕上げてくるのが韓国映画のしたたかなところなのだろう。
喜怒哀楽をほとんど表に出さないものの、雇い主の社長を相手にとぼけたやりとりを繰り広げる主人公のソナの雰囲気は、『ベイビーわるきゅーれ』の伊澤彩織を思い出したりして、これがなんともいい。
そして、執拗に追いかけてくる悪徳警官がとことん悪いのもいい。やっぱり、悪役はこのくらい徹底して悪いやつであった方がドラマが盛り上がる。
ウナを雇っている会社の社長は、いいかげんな人間に見えて実は凄腕のプロという存在で、ウナを匿ってボコボコにされる姿にちょっと『男たちの挽歌』のタクシー会社の社長(ケネス・ツァン)を思い出してしまったぞ。
ウナを追いながら、途中で真相に気がつく国家情報院の女性職員も、出番こそ少ないもののなんともいい味を出している。
その他のキャラクターも、みんないい味を出していて、なかなかこの演出はできないよなと唸らされた。
もちろん、随所で繰り広げられるカーアクションはひたすら素晴らしく、さらにはひたすら痛そうなバトルもなかなかのもの。韓国映画だけあって、血のりの量が半端ないのは、人によってはちょっと引いてしまうだろうけれど。韓国映画、本当に容赦ないよなあ。
ただ、ラストの手錠のくだりは、もう少しうまい演出はできなかったものか。あそこは、『スティング』のように観客をうまい具合に騙しておいてひっくり返すおいしい場面なのに。着地点だけがしっくり来なかったというのは、ちょいと残念だ。