★ジョー・R・ランズデール『凍てついた七月』角川文庫

 ジョー・R・ランズデール『凍てついた七月』角川文庫を読了。


 額縁屋を営み、妻と幼い息子を愛するごくごく平凡な男、リチャード・デイン。だが、彼の家に忍び込んできた強盗を正当防衛で射殺したことから、デインは思いも寄らない世界に足を踏み入れることになってしまう。
 角川文庫のジョー・R・ランズデールというと、ハップ・コリンズとレナード・パインのコンビを主人公にしたシリーズの印象が強いので、もっとはっちゃけた作品を予想していたのだけれど、けっこうシリアスな作風の作品だった。とはいえ、息子の報復のためにデインの息子を狙う強盗犯の父のベン、ベンの旧友にして優秀な私立探偵のジム・ボムなど、一筋縄ではいかないキャラクターが登場してくるところは、いかにもランズデールという感じだ。ストーリーもきわめてシンプルながらも、実にひねくれた展開となっている。なにしろ、自分の息子を殺そうとやってきた男と一緒になって、死んだはずの男を……おっと、これ以上はネタバレになってしまうか。
 主人公の心情が実に丁寧に描かれているので、ラストあたりの描写はなかなかにスリリングだ。