★C・J・ボックス『熱砂の果て』創元推理文庫

 C・J・ボックス『熱砂の果て』創元推理文庫を読了。
 「猟区管理官ジョー・ピケットシリーズ」の最新作である。すでに本作がシリーズ何作目であるのか分からなくなってしまっているのだけれど、途中で刊行が危ぶまれながらも講談社文庫から創元推理文庫にレーベルを移して刊行が続いているというのは、実に喜ばしい。
 しかも、本作はジョー・ピケットよりもネイトが主人公となっている巻なのである。これは楽しみではないか。このネイトもいっときは命の危機に陥りながらも、みごとに復活して、本作での大活躍となるわけだ。とはいえ、本作でもまたしてもズタボロになってしまうのだけれど。
 今回舞台となるのはワイオミング州南部の砂漠地帯。そこで大規模テロを計画している動きがあり、ネイトは素性のはっきりしない政府組織から「容疑を抹消するかわりにその動きをさぐってほしい」と依頼される。一方、ジョーも、素性の知れない政府組織が自分の地元で勝手なことをしていることに怒った州知事より、ネイトの行方を捜してほしいと依頼され砂漠に乗り込んでいくことに。
 そこでテロ計画をめぐるトラブルに巻き込まれていくのだけれど、なんとこのトラブルにはジョーの娘のシェリダンまでが巻き込まれていく。そのシェリダンの巻き込まれ方が、あまりにもありえない偶然なので、そこはもうちょっと工夫があってもよかったようにも思うし、シェリダンの友だちがやたらとうっとうしいキャラで邪魔くさいのだけれど、相も変わらず一気読みの面白さだったので許してしまおう。
 今回、なかなかいい味を出しているのが、食わせ物の州知事だ。この州知事のおかげでジョーはいままでもあれこれとトラブルに巻き込まれてきたわけだけれど、今回はなかなかにおいしいところを持って行く。そろそろ州知事の座を降りることになっている人物ではあるのだけれど、きっとまだまだ登場してくることだろう。
 そして、最大の注目点は、今回もジョーが仕事で与えられている車をオシャカにしてしまうのか、オシャカにしたとして次の車を与えてもらえるのかということだろうけれど、それは読んでのお楽しみだ。
 ほぼ1年に1冊のペースではあるのだけれど、いまから次巻が楽しみでならない。