★勇者は再び巡り会う(Dilwale)

 Netflixでインド映画『勇者は再び巡り会う(Dilwale)』を観る。
 15年前。ブルガリアを舞台に、カーリ(シャー・ルク・カーン)とミーラ(カジョール)が出会い、恋に落ちる。だが、ふたりは対立するインド人ギャンググループのボスの息子と娘だった。なんとかそれぞれの親を説得して、ふたりの仲を認めさせるための手打ちの場を設けるが、そこで銃撃戦が発生し、ミーラの誤解もあってふたりは訣別を余儀なくされる。
 現在。カーリはラジと名前を変え、弟のヴィール(ヴァルン・ダワン)と一緒にインドで自動車修理工場を営んでいた。そのヴィールはある時、スクーターが故障して困っているイシータ(クリティ・サノン)という女性と出会い、すっかりひと目ぼれしてしまう。やがてふたりは付き合いだし、結婚を考えるようになるのだが、実はイシータの姉はミーラだった。父をラジに殺されたと信じているミーラは妹にヴィールとのつきあいを禁じるのだが、過去を隠して生きてきたので理由を説明することができない。一方のラジも弟に理由を説明することができない。
 ラジとミーラが過去につきあっていたことを突き止めたヴィールとイシータは、なんとかふたりを仲直りさせることで自分たちの結婚を認めさせようと計画を練るのだが……。

 シャー・ルク・カーンとカジョールといえば、あの名作『シャー・ルク・カーンのDDLJラブゲット大作戦』(この邦題だけはなんとかしてほしい)のコンビである。それだけで嬉しくなってしまうではありませんか。
 監督は『チェンナイ・エクスプレス』のローヒト・シェッティ。
 対立する組織の若いふたりが恋に落ちるという設定はそれこそ山ほど作られており、ストーリーに新味はない。また、しつこく繰り返されるコミカルなやりとりも相当にうざい。このどうでもいいシーンをごっそりカットしてくれたら、とっても嬉しいと本気で思ってしまうほどだ。インド映画ならではの唐突なダンスシーンは、登場人物の感情表現を盛り上げることに成功していれば実においしいシーンとなるのだけれど、このダンスシーンにストーリーの流れを阻害するものがあったりしたのも残念。
 が、それでもカーリとミーラの恋愛感情の表現は完全に別格で、すっかり見惚れてしまった。さすがはシャー・ルク・カーンとカジョール。それだけに、訣別したあとの痛々しさも格別なのだ。さらに、カーアクションも無駄に迫力満点で充実していたりする。ストーリーに新味はないと書いたが、カーリとミーラが出会った直後の5分間だけのデートシーンの演出は実に楽しいし、そのあとの予想だにしなかった展開にはめちゃくちゃ驚かされた。
 というわけで、マイナス要素もたっぷりあるのだけれど、そこをほんのちょっと我慢すればなかなか楽しめる映画といえるのではないだろうか。