★未来戦記

 香港映画『未来戦記(明日戦記)』を観る。


 戦争と環境破壊によって疲弊しつくした近未来の地球。人類は大気を浄化するためのスカイネットプロジェクトを開始するが、そこに巨大隕石とともに植物型生命体パンドラが飛来する。勢力圏を広げながら街を破壊していくパンドラ。だが、そのパンドラには汚染された空気を浄化するという性質もあった。このパンドラを制御することができれば、地球は再生できると考えた人類は、パンドラの遺伝子を書き換えるための遺伝子弾を撃ち込む計画をたてる。だが、降雨によって爆発的に活動を活発化させるという性質を持つパンドラに嵐が近づきつつあった。その嵐がパンドラを襲う前にパンドラの中心地を探りあて、遺伝子弾を撃ち込まなければならない。ルイス・クー率いる空挺部隊は、その困難なミッションを成功させるために、パンドラの支配するエリアに乗り込んでいくのだが……。


 驚くなかれ、本格的なSFアクション映画なのだ。まず、設定がいい。しっかりとSFしている設定ではないか。そして、登場するSF的なギミックが素晴らしい。ルイス・クーたちが着用するパワードスーツ、多脚式ロボット、二足歩行ロボット、そうしたメカのデザインが実にいいのだ。さらには、パンドラに寄生していた凶暴な昆虫型生命体までもが登場する。おいおい、どこまでサービスしてくれちゃうんだよ。
 従来の香港映画だと、そうした要素を取り入れると、どうしても映像のどこかしらにチープ感が漂っていたものだけれど、本作に関してはそれはまったくなし。驚くほど、VFXが充実しているのだ。
 しかも、そうしたSFアクション映画の基本をしっかり押さえながらも、香港映画としての矜持も忘れずに、ガッツリ肉弾戦でのバトルも展開してくれるのである。パワードスーツを着たルイス・クーが、二足歩行ロボットや昆虫型生命体をぶんなぐり、蹴飛ばし、ナイフを振るうのだ。さすがは香港映画!
 監督は呉炫輝(ン・ユェンファイ)。いままでヴィジュアルエフェクトなどを担当してきた人で、監督作品は本作が初めてであるらしい。
 主演はルイス・クーとラウ・チンワンで、さらに脇にはカリーナ・ラウ、ニック・チョンまでもが顔を揃えている。
 そして、主演のルイス・クーは製作も担当。というか、ルイス・クーがこういう映画を作りたかったのだろう。
 2022年の香港映画の興収ベスト1に輝いた本作、これはオススメだ。