★カンフー・スタントマン

1987年以降に観た映画のタイトルを記録してあるのだけれど、そのうちの香港映画の本数をチェックしたら延べで838本だった。正直、バカじゃないのと思う本数なのだけれど、それだけ観てしまった最大の要因は、香港アクション映画の無茶なスタントだったのではないかと思う。そこにこめられた常軌を逸した熱量に圧倒されて、香港映画を見まくっていたのではないだろうか。
『カンフー・スタントマン』は、そうした香港アクション映画を支えてきたスタントマンの実態に迫ったドキュメンタリー映画だ。
あらためて、あの頃観ていたアクションシーンが、いかにむちゃなスタントに支えられていたのかを突きつけられて、あきれかえる。ムチャすぎるでしょう。だけど、そうしたアクションを演じることで、スタントマンたちは高い収入を手にしていたと知り、なるほどなあと思うところもあった。体を張って金を稼ぐことで、自分の仕事に誇りを持ち、頑張るぞというモチベーションに繋がったのだろう。俺たちが香港映画を支えているのだという自負にも繋がったのだろう。
香港アクションのスタイルがどう変遷してきたのかという流れもよくわかった。ブルース・リーがいかに偉大であったのかもよくわかった。サモ・ハンの存在がいかに大きかったのかということもよくわかった。

しかし、この映画を作ったのは中国なのだなあ。中国の人が香港のアクション映画をどういう目で見ていたのか、まるで知識がないので、ちょっと驚いた。
そして、そのために人名が簡体字で表記されているのが、自分としてはちょっと残念だった。香港の映画人を繁体字で認識していたので、簡体字とかカタカナで表記されてしまうと、誰のことだかよくわからなかったりするのだ。ま、これはあくまでも自分の個人的な事情ではあるのだけれど。

ふだん、映画を観てもパンフレットを買わなかったりするのだけれど、今回はしっかり買った。そして、買ったのが大正解だった。資料的にめちゃくちゃ充実しているパンフレットだったのだ。特に「香港武師班の系譜」は、香港アクション映画ファン必携の資料だ。いったい誰が作ったんだ、このリスト。登場人物紹介ページも素晴らしいし、谷垣健治インタビュー、下村勇二・大内貴仁の対談も読み応えたっぷりだ。
巻末に劇場登場作品のリストがあるのだけれど、たぶん「李小龍傳」「スコーピオン・ファイター」以外は全部観ているのではないだろうか。そんな自分だから人一倍この映画に肩入れしたくなってしまうのだけれど、ぜひとも多くの人にこの映画を観てもらいたい。そして、そのあとでレンタルビデオでも借りてきて、ここで取りあげられているような香港映画を観てもらいたい。